2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22300335
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松田 浩一 東京大学, 医科学研究所, 准教授 (90401257)
|
Keywords | p53 / シトルリン化 / ヒストン |
Research Abstract |
平成23年度は、平成22年度に同定したp53のシトルリン化部位に対する抗体の作成を行った。計6カ所の候補領域に対して抗体を作成したが、残念ながらいずれの抗体でも内在性のシトルリン化p53は確認できなかった。細胞内レベルに相当する低Ca濃度(10-7M)ではp53はシトルリン化を受けず、細胞外レベルの高Ca濃度(10-3M)でシトルリン化を受けるというinvitroの解析結果も含めると、p53は生理的な条件では細胞内でシトルリン化修飾を受けないことが示唆された。 また700例の解析で血清中p53抗体価と関連を示したHLA領域については、追加サンプルで検証を行ったが、p53の抗体価と関連する量的形質は同定できなかった。今後更に症例数を増やすと共に、担癌状態の患者に絞り込んで解析を進める予定である。 これらの結果を元に、p53以外の生理的な条件でのシトルリン化の基質の探索を行った。その結果、NPM1以外にヒストンH4R3,LaminC R197,R198がシトルリン化修飾を受ける事を明らかとした。さらにこれらの分子のシトルリン化によってクロマチン構造が弛緩し、DNaseによる核の切断が起きやすくなる事を示した。また癌細胞株にてPADI4の遺伝子変異を探索した所、60細胞株中6細胞株でアミノ酸置換を伴う遺伝子変異が認められ、さらに内5細胞株では顕著に酵素活性の低下が認められた。またPADI4ノックアウトマウスの検討によって、胸腺組織においてもγ線照射後ヒストンH4R3のシトルリン化がPADI4依存的に認められ、またノックアウトマウスはアポトーシス抵抗性を示した。 これらの結果より、PADI4が癌抑制遺伝子として機能し、DNAダメージ依存的なアポトーシス制御のメディエーターとして働くことが示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定の解析はほぼ終了した。生理的なp53のシトルリン化は今回作成した抗体では確認ができなかった。一方、p53以外の基質も並行して探索を行い、ヒストンH4及びLaminCがDNAダメージ依存的にシトルリン化修飾を受けることを明らかとした。またp53の抗体価と関連する遺伝因子は、追加サンプルの解析の結果再現性が確認できなかった。今後更なるサンプルの追加や、血清の採取時期を手術前のみとするなど適切なサンプルを用いた再解析が必要になると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の解析対象であったP53は残念ながらシトルリン化を証明できなかったが、p53以外に複数の分子がシトルリン化を受けること、またシトルリン化修飾の発癌における意義が我々の解析で明らかとなった。今後さらなる基質を明らかとすることによって、PADI4の生理的な意義が解明できると考えている。我々はこれまで報告した以外に複数の新規シトルリン化標的を同定しており、今後はこれらについて抗体の作成と機能解析を進めていく。またPADI4の発現量に影響することが知られている遺伝子多型についても発癌リスクとの関係について解析予定である。これらの解析を通じてp53-PADI4を介したシグナルネットワークを更に解明していく予定である。
|
Research Products
(5 results)