2011 Fiscal Year Annual Research Report
悪性中皮腫の遺伝子異常の同定と新規分子診断法の開発
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22300338
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Research Institution | Aichi Cancer Center Research Institute |
Principal Investigator |
関戸 好孝 愛知県がんセンター(研究所), 分子腫瘍学部, 部長 (00311712)
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Keywords | 中皮腫 / がん抑制遺伝子 / ゲノム異常 / がん遺伝子 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
染色体13q12に局在するLATS2遺伝子が悪性中皮腫の新規腫瘍抑制遺伝子であることが明らかとなり、中皮腫細胞の増殖・進展に係わる悪性化機構の解析が進んだ。LATS2は腫瘍抑制性のカスケードであるHippoシグナル伝達系の構成分子であり、LATS2の不活性化によりHippo伝達系が不活性化され、転写コアクチベーターであるYAPがん遺伝子産物が恒常的に活性化される。YAPが恒常的に活性化している3株の中皮腫細胞株を用い、RNA干渉法を用いてノックダウンし発現が低下する遺伝子群を網羅的な発現解析を用いて検討した。228遺伝子が3株に共通して発現抑制され、特にサイクリンD1やFOXM1などの細胞周期を正に制御する遺伝子群がYAPにより転写が制御されていることが明らかとなった。サイクリンD1,FOXM1のプロモーター領域にYAPおよび転写因子TEADが結合することをクロマチン免疫沈降法、転写レベルが増強することをルシフェラーゼリポーターアッセイによって明かにした。これらの遺伝子のノックダウンにより中皮腫細胞の増殖が抑えられた。一方、YAPにより結合組織増殖因子(CTGF)遺伝子の転写も亢進され、in vivoにおいて腫瘍間質の造成に関与していることが明らかとなった。さらに、CTGFの転写促進にはTGF-betaシグナル伝達系の活性化が関与していることも明らかとなった。すなわち、中皮腫細胞ではHippoシグナル伝達系の不活性化のみならずTGF-beta系の活性化が協調してCTGFの発現亢進を引き起こし、中皮腫の悪性形質の獲得に係わっていることが明らかとなった。本年度の研究により中皮腫におけるNF2-Hippoシグナル伝達系の不活性化によるYAPの恒常的活性化がどのような遺伝子群の発現を促進し、中皮腫細胞の悪性形質の獲得に関与しているかその詳細が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
悪性中皮腫における新規がん挿制遺伝子][LATS2の同定に成功し、それに基づく悪性中皮腫細胞におけるHippoシグナル伝達系の分子生物学的特徴の詳細について明らかにすることができた。これらのHippoシグナル伝達経路に関与する分子群の遺伝子変異、発現異常は高頻度であり、中皮腫の発がん・進展に大いに関与していることが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
悪性中皮腫において、ほぼ80%においてNF2,LATS2,あるいはSAV1といったHippoシグナル伝達系の構成分子の不活性化変異が存在することが明らかとなった。残りの20%についてもHippoシグナル伝達系の他の構成分子の異常の存在する可能性があるため、さらに詳細に検討を進める。特に、Kibra,Ajubaといった最近Hippoシグナル伝達系に関与することが報告された分子に対して中心に検討を遂行する。これらの分子の関与が明らかになった場合には、発現異常の頻度や病理組織学的な対比とともに、機能的な側面についても検討を加える。
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