2011 Fiscal Year Annual Research Report
テロメア動態制御因子を標的としたがん分子治療薬の探索開発
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22300341
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Research Institution | Japanese Foundation For Cancer Research |
Principal Investigator |
清宮 啓之 公益財団法人がん研究会, がん化学療法センター・分子生物治療研究部, 部長 (50280623)
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Keywords | テロメア / テロメラーゼ / がん / DNA損傷 / グアニン四重鎖 / 分子標的治療 / 染色体 |
Research Abstract |
一般にがん細胞は、テロメアを再生し、染色体の末端を安定に維持することにより、無限の分裂能を示す。我々はこれまでに、テロメアの枯渇もしくは構造破綻が制がん効果をもたらすことを実証してきた。本研究では、テロメア制御因子の制がん分子標的としての妥当性と作用機構を検証しつつ、標的化薬剤を創製・評価し、新たながん治療モデルを構築することを目指す。今年度は、(1)グアニン四重鎖(G-quadruplex)標的化合物でありテロメラーゼ阻害剤でもあるテロメスタチンの制がん効果および(2)テロメア伸長因子タンキラーゼの新たな機能と結合蛋白質に関する検討を進めた。まず、神経膠腫幹細胞(glioma stem cells)およびこれを分化させた非幹がん細胞の比較検討により、神経膠腫幹細胞がテロメスタチンに、より高い感受性を示すことを見出した。これと一致し、テロメスタチンは神経膠腫幹細胞においてDNA損傷フォーカスを誘導することが確認された。テロメスタチンはがん遺伝子c-Mybの発現も低下させ、制がん効果を発揮していることが示された。これは、c-Mybプロモータ部位のグアニン四重鎖構造がテロメスタチンの標的部位となっていることを示唆するものである。一方、siRNAによるタンキラーゼのノックダウンは、X線照射に対するがん細胞の感受性を上昇させることが明らかになった。質量分析により、タンキラーゼと複合体を形成する複数の蛋白質を同定することに成功した。これらの蛋白質には、DNA損傷応答に関連する因子が複数含まれていた。以上の結果から、タンキラーゼはこれらの因子との相互作用により、DNA損傷応答に関与する可能性が示唆された。これらの成果は、テロメアおよびタンキラーゼのがん治療標的としての妥当性をさらに支持するものであり、新薬の開発応用および従来のがん化学療法の成績改善につながると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
がん幹細胞のモデル系として前立腺がんではなく神経膠腫を用いるなど、当初の計画と比べて軽微な変更点はあったが、がん幹細胞に対していっそう効果的なテロメア標的化合物を見出したこと、タンキラーゼの新たな機能とそれを説明しうる相互作用因子を見出した意義は大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
神経膠腫幹細胞に対するグアニン四重鎖標的化合物の選択的制がん効果については、その詳細な分子機構について検討したい。DNA損傷修復に対するタンキラーゼの機能的関与については、損傷修復因子複合体の核内フォーカス形成の有無や、フォーカス形成に対する各因子の相互依存性を調べるなど、より具体的なメカニズム解析に移行したい。タンキラーゼはポリ(ADP-リボシル)化酵素なので、治療応用という観点から同酵素阻害剤の影響も調べてみたい。
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Research Products
(17 results)