2011 Fiscal Year Annual Research Report
東アジアから侵入する残留性有機汚染物質の越境汚染評価と数値モデルによる解析
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22310021
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
河野 公栄 愛媛大学, 農学部, 教授 (50116927)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
若松 伸司 愛媛大学, 農学部, 特命教授 (70109502)
竹内 一郎 愛媛大学, 農学部, 教授 (30212020)
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Keywords | 陸圏 / 水圏 / 大気圏影響評価 / 東アジア / 越境汚染 / 残留性有機汚染物質 / HRGC/HRMS / 環境動態 |
Research Abstract |
平成23年度は、東アジア近隣諸国からの越境汚染を評価するために引き続き南西諸島海域における海洋試料(海洋大気及び海水)を採取するとともに前年度採取し冷凍保存していた韓国の経済的排他海域である北部東シナ海済州島南部海域で採取した海洋試料分析を行った。その結果、前年度に越境汚染指標化学物質として設定したMirexが80%の検出率で海水試料から検出され、濃度範囲はND~0.083pg/Lであり、最高濃度が沖縄本島西方海域の表層海水において0.083pg/Lが検出された。全体的な傾向としては、北部東シナ海で検出率か高く、検出濃度は0.010~0.039pg/Lであり、北部東シナ海済州島南部海域のうち特に中国寄りの北西部海域で相対的にやや高い濃度傾向を呈した。本海域は中国からの大陸棚の先端付近であり、長江から東シナ海へ流出する淡水の影響が考えられることから、海水試料中の塩分濃度測定結果と合わせてMirex濃度との関係について検討したが、明瞭な関係は見られなかった。一方、検討した全海水試料からはToxapheneは検出されなかった。Mirexに関して、表層海水と前年度に検討したスルメイカ肝臓試料について濃度比を求めたところ、3.5x10^7が得られた。この値は、先に報告されている濃度比にほぼ匹敵しており、Mirexは海水から魚介類に高濃縮されやすく、魚介類などの海産食品が越境汚染影響を被っていることが考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の遂行には、越境汚染を評価するための環境試料と指標化学物質であるPOPsの微量分析が必要である。前者については、平成23年度も、平成22年度に引き続き長崎大学水産学部練習船・長崎丸に乗船し、船長はじめ乗組員の方々の協力の下、海洋試料(海洋大気、海水及び海底質)を試料採取計画通りに採取することができ、それら試料中のMirexをはじめその他の残留性有機汚染物質(POPs)の高分解能ガスクロマトグラフ質量分析計(HRGC/HRMS)による微量分析も順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、主にMirex, Toxapheneについて検討したが、さらに分析対象化合物として、DDTs, HCHs, PCBs及びクロルデン化合物などのPOPsについても検討し、越境汚染を評価する。海水試料に関しては未分析試料について分析を進め、海水中の濃度分布データと海流を考慮した越境汚染の評価について検討を進める。日本国内の陸域で採取した大気試料についても分析を進める。特に黄砂飛来時の濃度変動について後方流跡線解析を進める。さらにPOPs大気汚染指標植物として日本各地で採取した松葉未分析試料のPOPsを測定し、南西諸島海域の海洋大気データとも比較検討し、東アジア諸国の汚染源域としての評価を行う。また東アジア近隣諸国において大気試料を採取・分析し、汚染源域としての大気中POPs濃度の把握を行う。越境汚染のモデル数理解析に関しては、Mirexに関して後方流跡線解析の結果、明らかとなった東アジア諸国を発生源として大気中に拡散したMirexがメソスケールでの移流拡散によって南西諸島海域での濃度がどのように減衰するかをモデルによって推定し、実測データと比較検討する。
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Research Products
(4 results)