2011 Fiscal Year Annual Research Report
流出水の化学物質による生態影響リスクのミチゲーションのための人工湿地システム開発
Project/Area Number |
22310043
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中野 和典 東北大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (30292519)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 修 東北大学, 大学院・工学研究科, 教授 (80208214)
野村 宗弘 東北大学, 大学院・工学研究科, 助教 (70359537)
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Keywords | 人工湿地 / 面源負荷 / 生態影響 / 微量化学物質 / 亜鉛 / ペルフルオロカーボン / 多環芳香族炭化水素 / 競合 |
Research Abstract |
道路・市街地・農地等からの表面流出水は未規制であり,一般水質項目はもとより水圏生態系への影響が懸念される多様な微量化学物質が含まれており,生態影響リスクの緩和措置(ミチゲーション)の必要性が顕在化している.本研究は,多様な微量化学物質に包括的に対応するための3種類の人工湿地ユニットを開発し,これを組み合わせたハイブリッド型人工湿地システムを構築することにより流出水の多様な微量化学物質の除去機能を強化し,生態影響リスクのミチゲーションを実現できるシステムを確立することを目的としている. 平成23年度は,陽イオンとして存在する重金属を除去するユニットの性能評価を行うため,ろ材を3種類準備し実際の道路流出水を1年間流入させる現場での比較実験を実施した.濃度が比較的高かったCr(クロム),Cu(銅),Pb(鉛),Ni(ニッケル),As(砒素),Zn(亜鉛)の除去性能について3つのろ材で比較すると,ハイドロタルサイトおよびケイ酸カルシウムで砂よりも明らかに良好な除去性能が得られることが確かめられた.これら2種のろ材では,除去の難易度が高いZnについても良好に除去できることが分かった.さらに,ハイドロタルサイトよりもケイ酸カルシウムでより安定して高い除去率が得られる傾向となった.これらの結果より,初期雨量10mmを流入させる現場試験条件における重金属除去ユニットの有効性を実証することができた. 一方,陰イオンとして存在するリン,硝酸,クロム酸,ペルフルオロカーボンの中で,その存在濃度の差異にも関わらずペルフルオロカーボンの吸着性能が,他の共存陰イオンの競合作用を受けないことが明らかとなった.これはペルフルオロカーボン類がむしろ疎水性作用で吸着されていた可能性を示唆しており,疎水性物質である多環芳香族炭化水素類との競合吸着が生じることが考えられた.現在,その確認実験を実施中である. 次年度は,陽イオン,陰イオン,疎水性物質の3者が共存する条件で,それぞれの特化したユニットを組み合わせてその効果を検証する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東日本大震災の影響でペルフルオロカーボンに関わるテーマに遅れが生じることとなり,一部の計画を前倒しで実施(実際の道路流出水を1年間流入させる現場での比較実験)することで,計画の遅れを補うことを試みた.これが奏功し,研究計画全体としてはおおむね順調に進展させることができている.
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Strategy for Future Research Activity |
道路流出水に含まれる物質間の競合吸着作用が当初の予測と異なっており,それぞれの物質除去に特化した除去ユニットの組み合わせ方策を変更する必要がある.
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Research Products
(2 results)