2011 Fiscal Year Annual Research Report
人為改変による亜熱帯河口域の冬季水温上昇のメカニズムと自然再生手法
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22310050
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
島谷 幸宏 九州大学, 大学院・工学研究院, 教授 (40380571)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大槻 順朗 東京理科大学, 理工学部, 助教 (10618507)
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Keywords | リュウキュウアユ / 水温 / 塩分濃度 / 河口域 / 奄美大島 / 沖縄島 / レストレーション / 地球温暖化 |
Research Abstract |
平成23年度においては主に2つの現地観測を実施した.1つは,本研究対象種であるリュウキュウアユ仔稚魚の生息好適環境をより詳細に明らかにするため,奄美大島からの移入個体が再生産を行なう沖縄島ダム湖における水温連続観測であり,もうひとつは流動場と対象種の生息環境との関連性(水温・塩分濃度から規定される生理的条件および潮汐により輸送される餌資源条件)について明らかにするための流動場観測である.最大生息地である福地ダムダム湖と流入河川であるサンヌマタ川において,2010年12月~2月の冬季にかけて表層・底層(1m深)水温及び水位観測を実施した.これより,流入河川水水温については平均15℃,ダム湖水温は最高21℃であり,両者には明瞭な水温差が生じていることが明らかになった.ただし,ダム湖においても平均的な水温は20℃以下であり,対象種の生育環境として良好であると言え,室内実験値をベースとしたモデルを用いた生存率推定値では,データ取得期間中,水温が最も高い12月のダム湖湖心においても68%と高い推定結果であり,地域個体群の絶滅が懸念される河内川に比べ30%以上高く(3月),河口環境が良好に保持されている役勝川河口域に比べても遜色ない.このようなことから,リュウキュウアユ沖縄ダム湖移入個体は,現自然個体生息地である奄美大島より低緯度に生息域を持つにも関わらず,再生産が可能となっていると考えられた.2011年10月に同じ河口域を持つにも関わらず成魚の生息個体数が異なる奄美大島役勝川・住用川河口域において,GPSフロートを用いた流動場観測を実施した.その結果,上げ潮時において,より多くのGPSフロートが合流点から役勝川を遡上する結果となり,住用川に流入するフロートはわずかで,かつ遡上距離も短かった.住用川は恒常的に役勝川より河床高が高い状態にあり,2010年の水害後は土砂堆積によりさらに上昇している.このことが遡上海水の挙動に影響をもたらしていると推察された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全体の達成度としては良好であり,24年度の補足調査を以って,当初の研究目標を概ね達成できるものと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
新たに更新した地形データを用いて現在構築中の3次元流動シミュレーションを完成させる.また,現地観測においては,主に対象としている役勝川・河内川において,長期的な連続観測を実施することで,経月的な変化や出水時特性について明らかにする.
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Research Products
(3 results)