2011 Fiscal Year Annual Research Report
海水飛沫着氷が含むブラインに着目した着氷防止および除氷対策の研究
Project/Area Number |
22310110
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
尾関 俊浩 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (20301947)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
能條 歩 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (20311524)
松沢 孝俊 独立行政法人海上技術安全研究所, その他部局等, 研究員 (00443242)
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Keywords | 自然災害 / 水圏現象 / 減災 / 雪氷 / 着氷 |
Research Abstract |
本研究では着氷の課題を「氷の凍着」と「着氷の成長」の2つに分けて研究を推進している.本年度は3カ年計画の2年目にあたり,以下の8項目の調査・研究を行った. 1.前年度に記録した試験体への着氷画像データから気象,海象と着氷の成長の関係を解析した.さらに,前年度に取得した船体動揺としぶきの粒径分布に関するデータの解析を行った.2.前年度の結果を勘案し,航行安全設備の着氷雪防止対策に利用可能な材料について再度調査を行った.高撥水性シートと高親水性シートに加え,リサイクルに適したケナフ繊維を用いたシートを候補とした.3.低温実験室において,各種材料上の着氷雪特性を実験的に調査した.材料試片を用い,一定気象条件下における,着氷初生,成長,着氷力,剥落の様態に着目した着氷試験を行った.4.着氷体の観察記録および海水飛沫着氷の様態観察より難着氷素材の評価を行った.5.難着氷試料の実験灯塔(試験体)への取り付け方法について試験した.今年度はケナフ繊維を用いたシートを実験灯塔へ取り付け,冬季適時,海水飛沫着氷の様態観察を行い,非定常環境下での素材効果の現地評価,問題点の抽出を行った.6.氷海水槽に設置した簡易風洞を用いて,対象となる難着氷シートモデルに強風としぶきを当てる実験を行い,その着氷雪特性を実験的に調査した.着氷試験は一定気象条件下における着氷初生,成長,剥落の様態,除氷難易度に着目した.7.気象,海象についての防波堤現地データ取得を行った.気象は防波堤灯台と防波堤に最も近い高台の2地点においてデータ取得を行った.防波堤灯台では,高解像度の撮影装置を用いてインターバル撮影を行い,海象と海水飛沫の発生状況の記録を行った.8.寒冷海域を航行する船舶で海水飛沫の粒径分布に関するデータを取得すると共に,船体着氷の調査を行った. 6,7,8により得られたデータは次年度に解析を行う予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「氷の凍着」では海水飛沫が着氷するときにブライン(濃縮海水)を含む特徴に着目し,シート材料の難着氷性と変形を組み合わせた実用的な着氷軽減方法を研究している. 今年度の実地試験では,厳しい環境でシートが劣化した場合のリサイクルまで含めて材料を検討し,ケナフ繊維を用いたシートを試験材料に用いた.しかし,難着氷性能の不足と寒冷環境下での柔軟性に難点が見られたことから,使用に向かないとの結論に達した.低温実験室における高親水性シート,高撥水性シートを用いた着氷実験は当初の予定通り実験が進んでいる.簡易風洞を用いた強風下における着氷実験は,計画施設に修繕の必要が生じたため実験を平成24年4月に延期せざるをえなかったものの,実験は終了し予定していた項目のデータ取得が行われた.当初計画では船舶での海水飛沫着氷観測は発展的課題と位置づけていたが,前年度に続き,今年度も海水飛沫の粒径分布に関するデータ取得と,船体着氷の調査を行うことができた. 「着氷の成長」では着氷が発達する防波堤や船舶への波しぶきの供給と気象,着氷成長とブラインの排水について研究している. 当初計画では防波堤灯台のAC電源を用いてインターバル撮影を行う予定であったが,灯台のLED化に伴い無電源でインターバル撮影を行う必要が生じた.今年度はバッテリー駆動方式を採用したが,高解像度の撮影装置への電源供給不足に陥り,インターバル撮影期間は当初の予定よりも短くなった.来年度は改善が必要である.気象,海象と着氷の成長の関係については,前年度までに記録した試験体への着氷画像データの解析を進めている.また,前年度までに採取した海水飛沫着氷の内部構造の解析も進めている.さらに,前年度に取得した船体着氷に関するデータの解析を行っている.これらの結果は次年度に国際シンポジウムや国内学会等で発表する予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
低温実験室における高親水性シート,高撥水性シートを用いた着氷実験は当初の予定通り実験が進んでおり,着氷量の連続観測,着氷体への塩水着氷成長過程の様態観察により,難着氷材料の評価が行われている.最終結論を得るためには継続して実験を遂行することが必要である. 簡易風洞を用いた強風下における着氷実験は,実験が平成24年4月にずれ込んだので,このデータ解析は平成24年度に行う予定である. 船舶での海水飛沫着氷観測は,平成22年度,平成23年度に実施することができた.船体着氷は防波堤灯台等の航行安全施設への着氷と同様の現象であり,かつ対策が求められていることから,次年度も船舶での着氷観測が実施できるように調整し,実船におけるデータ取得を目指す. 防波堤灯台における観測では,AC電源の使用は今後も見込めない.着氷成長をセンチ単位で解析するには望遠レンズが装着可能な高空間分解能の一眼レフカメラが必要となるが,現行機種に使用可能なものはない.望遠インターバル撮影装置については,着氷の有無を判定することを主眼としバッテリーもしくは太陽光パネルで駆動するシステムに変更することとする.防波堤灯台における気象観測は,烈風により風向風速計に損傷が生じた.来年度はバッテリーと太陽光パネルを併用した気象システムを導入知ることを予定する. 海水飛沫着氷の内部構造の解析はMRIと薄片によるブラインチャネルの計測,塩分濃度計測,酸素同位体計測等を進めており,結果は次年度の国際雪氷学会のシンポジウムで発表予定である.
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