2011 Fiscal Year Annual Research Report
熱帯アジア域の沿岸豪雨強風帯:スマトラ島西岸に災害をもたらすメソ気象の発生機構
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22310115
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
森 修一 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境変動領域, チームリーダー (00344309)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋口 浩之 京都大学, 生存圏研究所, 准教授 (90293943)
伍 培明 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境変動領域, 主任研究員 (00360751)
服部 美紀 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境変動領域, 技術研究副主任 (50533519)
荻野 慎也 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境変動領域, 主任研究員 (80324937)
山中 大学 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境変動領域, 上席研究員 (30183982)
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Keywords | 集中豪雨 / 自然災害 / 大気現象 / 自然現象観測・予測 / 熱帯降水システム / 沿岸豪雨 / レーダー気象学 / 無人航空機ゾンデ |
Research Abstract |
1.スマトラ島沿岸豪雨帯集中観測の実施 昨年度実施した気候学的解析に基づき,スマトラ島沿岸豪雨強風帯が活発な雨季1ヶ月間(12月)を対象として,スマトラ島MIA観測点にJEPPドップラーレーダー,MuaraPutus観測点にMPレーダーを配置し,沿岸豪雨強風帯が形成されるメンタワイ海峡上空の降水,ドップラー速度,雲物理諸量の稠密連続観測を実施した.また,メンタワイ海峡を挟む両岸2地点,MIA隣接の現地気象局(BMKG)観測所およびシポラ島にて1日4-8回の高層ゾンデ強化観測を実施し,日変化解像可能な環境場データを得た.さらに,無人航空機(UAV)ゾンデによりMIA隣地からメンタワイ海峡までの観測飛行を実施した(ただし,UAVゾンデ飛行観測は機材トラブルのため1回のみで終了).この結果,期間中にスマトラ島を通過したMJOと同定される季節内変動(ISV)の活発期/不活発期における沿岸豪雨強風帯を多数捉えることができた.また,沿岸豪雨帯を構成するメソスケール降水系の形成・維持機構および時空間変動について,MPレーダーの長所を生かし雲・降水過程も含めた定量的な事例解析を実施し,沿岸域に豪雨強風災害をもたらす可能性のある降水システムの抽出を行った. 2.非静力学雲解像モデル(気象庁NHM)による沿岸豪雨強風予報実験の試行 上記集中観測と並行し,NHMを用いた沿岸豪雨帯の再現実験ならびに沿岸域における豪雨強風予報実験を試行した.現在は集中観測データに基づくモデル検証解析ならびに再現事例解析を実施中であり,最終年度に向けて更なるモデル計算チューニング,災害に直結する沿岸豪雨強風帯の形成維持機構,および時空間変動の要因特定を検討中である. 3.沿岸豪雨強風データベースの作成 初年度成果である気候学解析と豪雨関連災害データ,上記観測成果,およびモデル実験結果を統合し,インドネシア技術評価応用庁(BPPT)地球観測データ統合システム(NeoNet)上に災害情報データベース構築した(作業中).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
主たる今年度計画であるスマトラ島沿岸集中観測は,無人航空機(UAV)ゾンデが機材トラブルのため予定通りの飛行観測を完遂できなかったものの,問題発生時に対する十分なバックアップ体制を準備していたため,おおむね計画通りの観測データ取得を行うことができた.また,モデル実験やデータベース作業も順調に作業実施中である.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画最終年度として,スマトラ沿岸豪雨帯を構成する降水システムのメソスケール構造および降水システム内外(メンタワイ海峡上および両島沿岸)の環境場に関する理解進展に焦点を絞り,今年度実施した集中観測結果を主体に,気候学的解析やモデル実験等の各成果を取り纏めて論文発表すると共に,災害情報データベースを完成する.以上の知見により改良したモデルによる降水予測実験および予測情報リアルタイム試験配信を行い,短期検証観測の実施により当該予測結果の最終評価を行う.さらに,両国研究者および行政機関担当者による国際研究集会を催し,本研究による科学的成果の社会実装に向けた包括的な議論を展開する.
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Research Products
(6 results)