2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22320002
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鬼頭 秀一 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (40169892)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日鷹 一雅 愛媛大学, 農学部, 准教授 (00222240)
丸山 康司 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (20316334)
桐原 健真 東北大学, 文学研究科, 助教 (70396414)
森岡 正博 大阪府立大学, 人間社会学部, 教授 (80192780)
竹之内 裕文 静岡大学, 創造科学技術大学院, 教授 (90374876)
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Keywords | 農 / 環境倫理 / 食の倫理 / 有機農業 / 福島原発事故 / 放射性物質汚染 / マイナー・サブシステンス / 大地の倫理 |
Research Abstract |
人間の目然に対する働きかけのひとつのあり方として、「農」という営み注目し、そのあり方を「農」の哲学として構築するのが研究の目的であった。平成23年3月11日の東日本大震災とそれに伴う福島原発事故は、「農」という営みの根本に大きな問題提起をしたと言える。地震と津波の自然災害に関しては、今まで多くの自然災害の中で「農」という営みを維持してきたあり方が問われており、江戸期の篤農家の思想と実践は今改めて注目する必要があり、問題点を洗い出しつつある。一方、福島原発事故という大規模な放射性物質汚染を引き起こした大惨事は、大地で耕し続けることの意味、生産者と消費者の流通の問題、大地から切り離された野菜工場の検討など、これからの「農」のあり方の根本が問われることとなった。そのため、平成23年度は研究の方向性の大きな変更をすることとなり、福島原発事故に伴う問題を重点的に調査を行うこととなった。放射性物質汚染は、福島県の農業地域や阿武隈山系の山林や中山間地区を中心に、多くの「被害」を生むこととなった。その「農」の被害を、マイナーサブシンスンスも含めた生活全般まで射程に入れて検討するため、福島県立博物館の民俗学者(佐治靖)を研究協力者に加え、現地調査を集中的に行った。それとともに、今後の研究の基礎資料となる新聞のデータベース等作成を始めることになり、現在継続して行っている。また、二本松市東和町を中心に、福島周辺の有機農家の調査も放射性物質汚染、低線量被曝の問題を中心に継続している。放射性物質の中濃度汚染地域での避難するかそこに留まって「農」を続けるかという選択は「農」の本質にかかわる問題である。福島原発事故以後の以後の生産者と消費者との関係の変化に関して行った。そして、有機農業の対局とである「野菜工場」の今後の展開に関しては、その倫理学的、哲学的な課題を中心に検討を行った。一方で、福島以外のフィールド調査に関しても、宮崎県綾町、静岡市梅ヶ島、山形県西川町大井沢を中心に継続して行い、「農」の問題を立体的に明らかにしようと試みている。それらの調査の成果は、このプロジェクトのホームページで公開し、『研究成果報告』を大学のデポジトリも含めて積極的に発信している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「農」の哲学の具体的な課題として、3.11大震災と津波の自然災害と福島原発事故に伴う「農」の基本的なあり方の実態調査とその倫理学的・哲学的意味の解明に、研究計画を大きく方針転換を行った。しかし、有機農業の問題は既に昨年から議論しており、3.11以後の課題に関しても、今まで研究プロジェクトの中で議論、検討してきた内容と密接に結びついている。現代的な問題に取り組むということで、研究成果の情報発信に関しては、既存の研究の発表形態にこだわらずWEBでの情報発信に努めており、そのこともあって、当初の目的としていた研究は順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
福島原発事故に伴う「農」の被害を、マイナーサブシンスンスも含めた生活全般まで射程に入れて、その実態の解明と、哲学的、倫理的課題について整理する。今後の研究の基礎資料となる新聞のデータベース等も継続して行っていく。二本松市東和町を中心にした福島周辺の有機農家の調査、農生態学的な視点からの課題、有機農業の対局とである「野菜工場」の今後の展開等々、それぞれの問題を倫理学的、哲学的な課題として整理する。また、江戸時代からの災害と篤農・老農の活動や思想との関係の歴史的解明を行う。それらの成果を検討するため研究会を行い、研究の成果は,昨年と同様、『研究成果報告』や『ニュースレター』という形で、今後も定期的に、積極的に発信していく。8月にはそれをとりまとめて、中間報告書をまとめ、それをもとに、研究をとりまとめるための追加調査を行う。年度末には報告書を作成する。
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Research Products
(30 results)