2011 Fiscal Year Annual Research Report
共生の宗教へむけて-政教分離の諸相とイスラーム的視点をめぐる地域文化研究
Project/Area Number |
22320017
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
増田 一夫 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (70209435)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊達 聖伸 上智大学, 外国語学部, 准教授 (90550004)
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Keywords | ライシテ / 政教分離 / 世俗化 / 共和制 / イスラーム / フランス / ケベック / 移民 |
Research Abstract |
平成23年度は東日本大震災と福島第一原発の事故の余波が強く感じられるなかで始まり、国際学会なども多くがキャンセルされた。その半面、Rene Girardに強く影響を受け、原子力災害に関する研究でも知られるJean-Pierre Dupuy氏(スタンフォード大学教授、フランス放射線防護原子力安全研究所)の来日を実現することができ、同氏との研究会を開催することができたのは収穫であった。「共生」と「宗教」、さらには大規模災害と巨大科学技術における宗教性という新たな次元への通路を開拓する手掛かりができたことは特筆に値する。 それ以外にも、Micheline Milot教授(ケベック大学モントリオール校)を囲んだ研究会、さらにはJerome Host監督のドキュメンタリー『スカーフ論争--隠れたレイシズム』(2004年、仏)を上映し、フランス植民地史を専門とする平野千果子教授(武蔵大学)などディスカッションをおこなうなど、種々の研究会を開催しながら研究を続けた。 代表者・増田は、上記の組織に携わると同時に、中間的なまとめとして、「ナショナル・アイデンティティとしてのライシテ--フランス、スカーフ問題の背景」を執筆した。 分担研究者の伊達聖伸は宗教学的な方面から活発な活動を展開し、今年度はもっぱらカナダ・ケベック州におけるライシテを研究すると同時に、和辻哲郎における宗教観を論じた。昨年度刊行した単著『ライシテ、道徳、宗教学』が、今年度の渋沢・クローデル学芸賞、日本宗教学会賞、日仏社会奨励賞、サントリー学芸賞を受賞したことも申し添えておきたい。 昨年までの分担研究者7名は、経理上の理由もあって連携研究者となっている。それぞれの分野で研究を続行しており、著書2点、一般学術論文7点を著している。とりわけ長澤はアラブ革命関連の論文3点を完成させており、そのなかで民衆革命と、本研究の一方の焦点であるイスラームとの関係を考察している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
主に震災の影響のため、年度の前半はなかなか組織だった動きができなかった。しかし、状況によって強く要請されたような形で、「聖なるもの」と「暴力」の思想家ルネ・ジラールにも近いジャン=ピエール・デュピュイ教授(スタンフォード大)などを招き、社会-科学技術-聖なるものの関係にも研究領域を広げた。予定されていなかった展開ではあるが、研究はより豊かになったと考える。その点も進展であると考えると、研究はおおむね順調に進んでいると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は元々現代社会が抱える強制の問題が出発点であった。その意味では、平成24年度の初めに、主な対象地域であるフランスで、ナショナル・アイデンティティ論争をしかけた現職が大統領選に敗れ、政権交代が実現したことの意味は大きい。研究がカバーを試みる多地域の動向も視野に入れながらも、政権交代に伴う変化、主にマイノリティへの対応などに注目しながら研究を続けたい。 研究遂行上の最大の問題点は、大学における事務・行政業務であるが、研究の時間を何とか確保しつつ、科研費を与えられた機会を最大限に活用したいと考えている。
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Research Products
(5 results)