2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22320025
|
Research Institution | Kinjo Gakuin University |
Principal Investigator |
高橋 博巳 金城学院大学, 文学部, 教授 (70109833)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安藤 隆穂 名古屋大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (00126830)
鷲見 洋一 慶應義塾大学, 文学部, 名誉教授 (20051675)
渡辺 浩 法政大学, 法学部, 教授 (10009821)
長尾 伸一 名古屋大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (30207980)
堀田 誠三 福山市立大学, 都市教養学部, 教授 (40144109)
寺田 元一 名古屋市立大学, 人文社会系研究科, 教授 (90188681)
伊東 貴之 国際日本文化研究センター, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (20251499)
川島 慶子 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20262941)
大石 和欣 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (50348380)
逸見 竜生 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (60251782)
玉田 敦子 中部大学, 人文学部, 准教授 (00434580)
|
Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 公共知 / 啓蒙 / 百科全書 / 東西比較 |
Research Abstract |
今年度の研究会は4月17日、17世紀から19世紀にかけての歴史哲学・政治思想史の分野の研究で知られるベルトラン・ビノシュ(パリ第1大学教授)の“LES LUMIERES OU L'OPINION PUBLIQUE EN ACTE”で幕を開け、続いて6月22日、韓国より安大会(成均館大)金時徳(高麗大)両氏を招いて「18・19世紀における朝鮮の百科事典に関して」ならびに「近世日本の小説に見える朝鮮時代の風俗画‐近世東アジアの情報流通‐」をテーマとした研究会を行い、それに合わせて高橋が「清朝の中国から見た日本イメージ」を報告して、次年度の韓国18世紀学会で共同で行う研究集会の方向性を検討した結果、ヨーロッパ・日本・韓国、それぞれの「百科全書」をテーマとして調整することとなった。 12月22日には、玉田敦子「「新旧論争と“完成”の概念」、前田勉「江戸の読書会」、堀田誠三「歴史記述における時代区分-“近代”は何時からはじまるか?」の三つの発表を中心に研究会をもち、殊に「読書会」という知の形成の場への着目は新鮮だった。 個別には高橋が従来の浪華-ソウル-北京ー越南を結ぶ北の半月弧に加え、琉球を中心に越南-福建(北京)-琉球-薩摩(江戸)の南の半月弧への足がかりとして、清朝から派遣された王文治や李鼎元らの詩文集を検討することによって、東アジアの学芸共和国をトータルに把握する視点を得つつあるのと合わせ、鷲見洋一氏を中心に「『百科全書』研究-大事典の典拠と生成」プロジェクトの研究成果を次年度、韓国18世紀学会に持ち寄りたい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
知のテクストの修辞的性格について、東西比較という視点から西のほうでは鷲見洋一氏を中心に寺田元一・逸見龍生・玉田敦子各氏の百科全書研究の業績を参照されたい。その主要部分は次年度の韓国18世紀学会における発表を通じて、日韓双方の研究に刺激を与え、殊に韓国の百科全書派(北学派)の研究に新生面を開く可能性が期待される。 堀田誠三・玉田敦子両氏は12月の研究会で、新旧論争・歴史記述における時代区分をテーマに問題を整理し、今後の議論の出発点とされた。大石和欣氏は「共歓共食と公共知-消費文化の時代のイギリス食事情」と題する興味深い試論を韓国18世紀学会の要請で同学会のウェブサイト上に発表し、大きな反響をよんだと聞いている。 他方、東のほうでは伊東貴之氏の幅広い業績を参照されたい。渡辺浩氏は福沢研究に一石を投じられた。高橋も東アジアの学芸共和国の実態を日朝中三国の間に探って、殊に清朝の中国の達成の高さに注目し、翻ってその達成が周囲の水準を引き上げていることを、越南や琉球の事例にまで領域を広げて行っているところである。6月の研究会でも、韓国から招いた安大会・金時徳両氏とともに発表を行った。 なお12月の研究会では、前田勉氏を招いて、「江戸の読書会」の意義について討議したことを付記する。おおむね研究面では所期の成果を達成したと考えるが、HPなどの研究結果の公表については次年度に持ち越さざるを得なくなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終年度に当たり、年度計画に掲げた出版の問題に関しては、寺田元一氏が6月の日本18世紀学会の共通論題で地下出版を取り上げて各分野の知を総合する。 5月には、鷲見・寺田・逸見・長尾・高橋が韓国18世紀学会において、百科全書・英国の公共知・東アジア学芸共和国の実態について報告を行い、情報交換に努める。 大石和欣氏は、18世紀のイギリスにおいてチャリティ活動を通して女性が教育普及を果たしていった過程を探究することによって、「公共知」の形成のプロセスをジェンダー論の観点から解きほぐすことを目指している。 また高橋は清朝から琉球に「文人外交官」として派遣された王文治や李鼎元らの詩文集を資料として、東アジアの学芸共和国としてのあり方を実証的に明らかにすることを目指している。 そうした作業を行うと同時に、メンバー全員でこの間の共同研究を踏まえ、各自の観点からそれぞれ論文一篇を執筆し、その検討のための研究会を開催して全員の討議を経たうえで『公共知論集』(仮題)を刊行する。
|