2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22320125
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
平川 新 東北大学, 災害科学国際研究所, 教授 (90142900)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 仙台藩・仙台領の歴史 / 生業史 / 社会史 / 藩政史 / 地域史料の保全と活用 / 地域連携 |
Research Abstract |
かつての仙台藩領における地域の歴史資料保存について、前年度に引き続き東日本大震災の被災地での歴史資料レスキューを進めた。平成24年度は個人蔵を中心とする25件に対して被災地からのレスキューと応急処置を実施し、史料の劣化を防止することができた。また、デジタルカメラによる撮影で約15万点の古文書画像を収集した。撮影については被災資料とともに、財団法人斎藤報恩会が戦前に収集した仙台藩・東北関係の古文書約1500点の全点を撮影完了し、地域の貴重な歴史資料を公正に保全するための環境整備を行うことができた。 被災対応した古文書の大半は、これまで地元関係者でも所在を確認していなかった文書であった。その一つである宮城県多賀城市の仙台藩重臣天童家の古文書について、戦国時代以降の古文書を解読・分析した調査報告書として自治体より刊行した。このことで、仙台藩の家臣団編成や給人の所領支配、地域の共同体の実相を明らかにすることができた。 合わせて、仙台藩の地方知行制度、租税制度、政治理念、災害史について論文などの研究成果を得た。前述の被災古文書の分析からは、従来存在が知られていなかった仙台藩重臣層の城下町屋敷を管理した「留守居」の存在と、その活動を明らかにすることで、城下町屋敷の機能について明らかにした。租税については、現在の岩手県一関市域の村落文書の分析により、江戸時代後期において税率決定の主導権が村落側にあったとの試論を提示し、同時期の日本列島全体の村落史に対する問題提起を行った。政治理念については、江戸時代中期以降の実務官僚層による意見書から、彼らが全国的な学問ネットワークの中に位置付き、儒学的な実利優先から、教諭を経済政策に先んじて位置づける固有の思想形成を行っていた事を明らかにした。災害史では古文書調査による宮城県ほか太平洋沿岸の被災状況の復元と復興について解明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
旧仙台藩領での歴史資料所在調査では、被災した歴史資料と合わせて所蔵者からの依頼を中心に未知の古文書史料群の確認が続いている。これらを順次保全しており、新たな歴史像を描くための環境が整ってきている。 論文などの研究については、膨大な被災資料や未発見文書の対応に追われる中、それらを活用した仙台藩での基礎的な史実確定、およびそれに基づく新たな視角の歴史像を提示出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
被災した歴史資料への対応も含め、旧仙台藩領での史料確認調査を、地元の行政や郷土史家と連携しながら進めてゆく。そのことにより、地域の文化遺産とも言うべき古文書資料などの将来への継承にも資するような基礎的な情報環境の整備を継続してゆく。 また研究期間が残り二か年となったことを踏まえ、過去三か年の成果も踏まえた研究をさらに推進する。被災地では復興の進展、および停滞の両側面において地域社会の変容が続いており、成果の発表は新たな江戸時代史の提示を越え、被災地に対し専門性を活かした具体的な支援という側面もある。論文集、史料集の刊行やシンポジウムの開催により、研究成果の公開と社会への還元について、順次企画・推進してゆく。そのことにより、地域の歴史を多くの人びとが知り得る手がかりとなる情報を提示することを目指す。
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Research Products
(22 results)