2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22320131
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
成田 龍一 日本女子大学, 人間社会学部, 教授 (60189214)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩崎 稔 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (10201948)
吉見 俊哉 東京大学, 大学院情報学環, 教授 (40201040)
丸川 哲史 明治大学, 政治経済学部, 教授 (50337903)
渡辺 直紀 武蔵大学, 人文学部, 教授 (80409367)
坪井 秀人 名古屋大学, 文学研究科, 教授 (90197757)
鳥羽 耕史 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (90346586)
戸邉 秀明 東京経済大学, 経済学部, 准教授 (90366998)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 日本史 / 近現代史 / 戦後史 / 文化史 / 思想史 |
Research Abstract |
本年度も冷戦文化研究会を定期的に開催し、各自の成果を共有することをおこなった(6月29日。11月17日。3月16日)。1950年代を扱った著作(中谷いずみ『その「民衆」とは誰なのか』青弓社、2013年)および、冷戦期の記憶のあり方を扱った著作(長志珠絵『占領期・占領空間と戦争の記憶』有志舎、2013年)の合評会を著者を招いて行った。また、石原俊(明治学院大学准教授)の報告がなされた。沖縄近現代史講義も継続させ、沖縄から比屋根照夫(琉球大学名誉教授)を招き、沖縄近現代史について報告してもらった。6月16日、9月7日、2月16日と、三回の報告を受けた。歴史を踏まえた現在の沖縄文化が議論の対象となり、比屋根の仕事の検討、および沖縄のいまをめぐって議論を重ねた。冷戦文化を理解するときに要となる沖縄の文化と歴史を学ぶ試みとして大きな成果を挙げた。本研究の成果を国際的に発信する試みとして、研究代表者・成田龍一と研究分担者の坪井秀人、鳥羽耕史が、安丸良夫(一橋大学名誉教授)、長志珠絵(神戸大学教授)とともに、10月16日~22日にかけてアメリカに出かけた。ニューヨークのコロンビア大学を会場として開かれたMJHW(近現代日本学会)のパネルとして、戦後歴史学の再検討をおこない、安丸が基調講演、成田が報告をした。また今年度は、教科書を軸とする考察をおこない、「教科書を/で考える」と題するワークショップを、8月29日、3月8日と二回にわたって催した。冷戦文化のなかでの歴史教育に接近する試みであった。さらに、成田は、「「3.11」を経て、あらためて戦後思想を考える」と題するセミナーを4月18日、5月16日、5月30日、6月13日、6月20日の4回にわたっておこない、冷戦文化のなかにおける作家・大江健三郎、社会学者・見田宗介、映画監督・篠田正浩、さらに文化人類学者・山口昌男について論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
定期的な冷戦文化研究会に加え、沖縄近現代史講義が加わり、厚みを増した。報告内容も、1950年代の日本(本土)をはじめ、沖縄、朝鮮半島、台湾、さらに南方の島々へと空間的な視野も広げられている。陸地ばかりでなく海洋、さらに島々から冷戦体制を見直すという試みである。こうした冷戦文化研究会での成果は、アメリカで開催された国際会議において還元した。また、冷戦期に重なる「戦後歴史学」という「知」の歴史学的意味をこの国際会議で報告したことも重要な成果であった。本プロジェクトにおいて、アメリカにおける日本研究者と連絡をとり関係を強化してきたが、アメリカでの国際会議のパネルには、H・ハルトゥーニアン(ニューヨーク大学)、T・フジタニ(トロント大学)、D・ボッツマン(イエール大学)らがコメンテーターとして参加し、C・グラック(コロンビア大学)が司会を務めた。参加者は100名を越え、冷戦期の日本文化、「知」のありように関心が多く寄せられていることが分った。この関係を今後も継続し、強化していくための打ち合わせもおこなっている。 このほか、研究代表者の成田龍一が依頼を受けて、戦後=冷戦期の思想・文化についての連続のセミナー(5回)をおこなったことも成果の還元であった。さらに、中学校・高等学校の教員たちに依頼を受け、冷戦期と冷戦期以後において歴史教科書の記述がどのように変化したかについても報告した。これも成果の還元である。 そのほか、各自が出版活動をおこない、随時、成果を公表している。戦後思想史を冷戦文化の観点から考察することもそのひとつで、歴史学、文学史の領域で成果を着実に公表している。 文献史料とあわせ、本研究では重要な核となる大衆文化にかかわる資料も、DVDをはじめ順調に収集され前進している。東アジアの射程での考察が着実に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は最終年度であり、成果のまとめを図るためにも冷戦文化研究会を軸とする活動を強化しながら継続する。教科書の検討、またそこで接点を有する、中学校・高等学校の教員たちとの協同の作業も継続する。ここでの成果をもととし、国際会議に臨むほか、研究集会を催し、こうした集会での報告も、あわせて本年度の活動の軸とする。 このとき、これまでネットワークを形成してきたアメリカ、カナダ、ドイツ、さらに韓国の研究者のほか、前年度以来、中国の研究者とも接触を開始している。冷戦文化のなかで中国の文化活動の検討は欠かせず、中国の研究者と冷戦文化を考察する方向を本年度も追求する。 また、本研究全体として研究活動を活発につづけその成果を還元することを図る。中学校・高等学校の教員たちとの協同の作業、また国外・国内の研究集会はその試みの一端である。前年度以上の充実を図るべく、準備を進める所存である。 加えて、研究代表者、および研究分担者がそれぞれの領域において、論文の執筆に留まらず出版事業にかかわっている。そこでの出版活動を、本研究に還流することを図りたい。合評会はそのひとつの実践であり、多くの刺激が与えられるとともに、成果が直接に共有される。本年度も、合評会を積極的に推進していきたい。 あわせて研究代表者および研究分担者が、成果を公表することも推進する。本研究も、かなりの研究蓄積ができてきたので、成果公表にも積極的に取り組んでいきたい。依頼を受けてのセミナーの開催は、そうした方向性の追求という意味を有している。また、中学校・高等学校の教員たちとの接触も、この試みといいうる。 資料収集も着実に進んでいるが、冷戦期の文化については、まだまだ手つかずの領域もある。とくに大衆映画と大衆小説の領域は、いっそうの充実を期したい。
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Research Products
(18 results)