2011 Fiscal Year Annual Research Report
朝鮮半島の「水環境」をめぐる社会・経済・文化の歴史的諸相-漢江を中心として
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22320138
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
六反田 豊 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 准教授 (40220818)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 亮太 佐賀大学, 経済学部, 准教授 (00363416)
長森 美信 天理大学, 国際学部, 准教授 (50412135)
森半 雅彦 九州大学, 大学院・人文科学研究院, 准教授 (50345245)
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Keywords | 朝鮮史 / 水環境 / 漢江 / 水運 / 津渡 / 淡水魚食 / 水利 / 治水 |
Research Abstract |
本研究の目的は、朝鮮半島の「水環境」をめぐる社会・経済・文化の様相について、高麗初期から朝鮮末期までにおけるその時期ごとの歴史的特質と変容の過程を明らかにするために、各種資料収集と現地踏査、およびそれらを踏まえた基礎的な分析・考察をおこなうことにある。上記の目的を達成すべく、2年目にあたる2011年度は、以下のような研究活動をおこなった。 (1)主たる研究対象である漢江流域の現地踏査を2回実施した。主要な踏査地は、(1)北漢江流域に相当する江原道麟蹄・華川・春川、(2)漢江本流河口部に相当する京畿道高陽・金浦、(3)南漢江流域に相当する忠清道忠州・江原道原州・京畿道驪州等であり、これらの地域に点在する水運拠点や津渡等の史跡を確認し、周辺住民からの聴き取り調査を実施した。このうち(3)では、2011年度の既調査地の再度調査をおこない、いわゆる"四大江"改修工事による河川改修完了後の状況を把握するとともに、漢江支流の小河川における農業水利に関する調査もあわせて実施した。 (2)佐賀大学(佐賀県佐賀市)において研究会を開催し、あわせて筑後川流域の「水環境」関連史跡踏査を実施した。研究会では、同大文化教育学部の永島広紀准教授をゲスト・スピカーに招き、筑後川流域における農業水利関係に関する報告をしていただき、「水環境」の歴史学的研究に関する意見交換をおこなった。筑後川流域踏査では、永島氏の報告を踏まえつつ、農業水利関係の堰や水車等を現地踏査した。 (3)その他、『朝鮮王朝実録』をはじめとする基本史料からの関連情報蒐集とともに朝鮮時代の漢江での船旅を記録した『入峡記』の分析を進めた。また、現地踏査に際して各地の文化院・博物館等を訪ね、漢江の「水環境」をめぐる研究文献類も可能な限り蒐集に努めた。 これらの研究活動により、本研究のもっとも基盤となる各種データの蒐集を順調に進めることができ、また、たんに朝鮮にとどまることなく、広く人類史の課題としての広がりのなかに研究を位置づけることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主たる対象である漢江での現地踏査をほぼ完了した。また、おもに日本の河川・湖沼等を対象とする「水環境」関連研究者との意見交換や共同の勉強会・研究会なども開催することができ、研究手法や問題意識の面で得るところが大きかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2012年度は最終年度に相当する。これまでは、漢江での現地踏査を最優先の課題として研究を進めてきたが、それはこの2年間でほぼ完了したので、2012年度は比較のために朝鮮半島の他の河川での現地踏査を1回実施する(洛東江を予定)。それとあわせて、韓国での史料収集(ソウル大奎章閣韓国学研究院)と、これまでの研究活動を踏まえた成果のとりまとめ作業をおこなう予定である。
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Research Products
(3 results)