Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡橋 秀典 広島大学, 大学院・文学研究科, 教授 (00150540)
堤 研二 大阪大学, 大学院・文学研究科, 教授 (20188593)
伊藤 達也 法政大学, 文学部, 教授 (60223161)
宮地 忠幸 国士舘大学, 文学部, 講師 (40339354)
藤田 佳久 愛知大学, 名誉教授 (70068823)
|
Research Abstract |
本科研の研究2年度に入り,1年度目の現代山村の現状に関する総論的な議論をふまえ,各自,具体的な分析作業にとりかかった。研究代表者である西野と分担者の藤田は,山村振興地域の内,全域が山村振興地域となっている507市町村(2000年の行政区画による市町村)の全部山村について,1985年から2005年までの20年間における人口増減率,2005年における若年齢者比率(20-39歳)によって507の山村を7類型に分類し,その社会経済的特徴について分析を試みた。その結果,21世紀初頭において若年齢者比率が高く,比較的安定した山村は,第三次産業比率が高く,個人所得も山村平均を上回っていることが判明した。概していえば,今日,山村として維持されているのは,道路整備などの社会資本整備によって都市地域への通勤圏内に組み込まれた地域であるか,観光・リゾート地域,特定農産物に特化した農業地域であり,山村本来の林業を経済的基盤としている山村は皆無であることも判明した。その際,定住促進のための条例制定など,政策的人口誘導も功を奏している事例あることも認識された。 こうした総論的分析をふまえ,全部山村における農業の現状分析(宮地・高柳),林業活動の動向分析(中川),ソーシャルキャピタル形成と地域振興との関係性(堤),市町村合併に伴う山村地域の文化施設の統廃合問題(岡橋),山間の集落史と現状に関する研究(関戸),観光振興による山村維持に関する研究(合田)などの各論研究が進められた。山村の現状分析から,山村本来の経済的基盤の上に山村が存立していないことが改めて確認された一方で,政策や伝統的な山村産業の代替産業が定着した山村では,いわゆる限界集落問題が発生していない傾向のあることも認識され,山村の多様化が進んだことも理解された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
総論的部分の研究は,ほぼ終了しつつあり,個別分析についても進行している。ただ,個別分析については,データの把握がうまくいかない分野があり,これについては研究方法も含め,検討している。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度は,これらの分析成果をふまえ,集落単位での人口動向,産業分析などから,非限界性を示す山村の存立基盤を明らかにする。ただ,林業については,今回の研究テーマから林業活動を分析するには,林業センサスデータでは不十分なため,素材生産の実態を把握する必要があるが,そのデータを把握している県単位の森林組合連合会の協力が得られず困惑している。これについては,個別に直接的に再度データ提供の協力依頼を行う予定であるが,データが得られない場合を考えて,研究アプローチの方法についても再考する。平成25年3月には,研究最終成果報告書をまとめる予定である。
|