2011 Fiscal Year Annual Research Report
法史・国制史における「伝統」と「構築」――転換期を中心とした多層的アプローチ
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22330001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田口 正樹 北海道大学, 大学院・法学研究科, 教授 (20206931)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 信夫 京都大学, 大学院・法学研究科, 教授 (40004171)
西川 洋一 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 教授 (00114596)
小川 浩三 桐蔭横浜大学, 法学部, 教授 (10142671)
神寶 秀夫 九州大学, 大学院・人文科学研究院, 教授 (90118331)
新田 一郎 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 教授 (40208252)
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Keywords | ローマ / ドイツ / ビザンツ / 法学 / 帝国 / サヴィニー / 古典 / 源氏物語 |
Research Abstract |
今年度は研究の第二年目であり、前年度に行われた研究状況の整理と一般的・理論的諸問題を中心とする検討の結果をふまえて、研究班毎に論点の絞り込みがなされた。そうした論点の一部は全体研究会で報告され、異なる時期との比較も含めて、多様な観点からの議論がなされた。議論された具体的テーマとしては、例えば、中世におけるローマ帝国の概念史とその成立の問題について、ドイツの歴史家ミュラー・メルテンスの学説など、近年の諸研究を参照しつつ検討がなされ、ドイツの支配者が支配する国がローマ帝国と観念されるにあたっては、11世紀前半のザーリ朝前期の時代に重要な画期が存するという見通しが提示された。また、10世紀後半の史料である、リウトプラントの『使節記』の内容が詳細に検討され、西方世界側のビザンツ観とそれとの関係での西方の皇帝権の位置づけなどが、他の叙述史料や当時の南イタリアの政治情勢との関連も含めて考察された。ドイツ三月前期の歴史法学に関しては、サヴィニーとプフタの学説が法成立論と法源論を中心に検討され、ヘーゲルやガンスなど歴史法学批判派への対処や、歴史法学自体の時期的変化をも考慮に入れつつ、民族精神、立法の役割、慣習法の概念や位置づけ、法曹法と学問法などの論点について詳しい考察がなされた。最後に日本史分野では、日本中世における「古典」の作用と意義が考察され、日記の史料論、古典としての源氏物語、二条良基における古典研究と有職学、大内裏考証における復元と見立て、などの論点が検討と議論の対象となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画の2年目に入って、ローマ帝国と皇帝権、近代ドイツの歴史法学といった、西洋の国制史・法史上の重要問題にして、伝統と構築の関係が特徴的にあらわれるトピックに関して、研究と議論が進展した。日本に関しても、中世における伝統的な素材(「古典」)と構築(「見立て」)の関係について、具体性を伴った議論が深まるとともに、近世への展望も試みられ、西洋との比較にも手がかりが与えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は研究の最終年度であるので、個別研究班毎に論点の検討を完成させるとともに、年2回の全体研究会での報告と議論を経て、研究成果を集約・総括する。この過程では、メンバーが国内の学会等で検討結果を発表して、より広い意見交換の機会を持つようにする。また、海外での研究成果発表や、外国人研究者の招聘を通じて、国外の学界とも議論を続けながら、我々の研究結果をまとめていく。
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Research Products
(33 results)