2011 Fiscal Year Annual Research Report
西洋社会経済思想翻訳術語の生成と日中『共産党宣言』翻訳史に見るその展開の比較研究
Project/Area Number |
22330063
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大村 泉 東北大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (50137395)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
窪 俊一 東北大学, 大学院・情報科学研究科, 准教授 (50161659)
久保 誠二郎 東北大学, 大学院・経済学研究科, 博士研究員 (80400216)
渋谷 正 鹿児島大学, 法文学部, 教授
橋本 直樹 鹿児島大学, 法文学部, 教授 (50180831)
陳 力衛 成城大学, 経済学部, 教授 (60269470)
|
Keywords | 西洋古典 / 東洋史 / 日本史 / 社会思想 / 『共産党宣言』 / 民族 / 国民 / 『ドイツ・イデオロギー』 |
Research Abstract |
「共産主義」、「民族」、「資本主義」、「恐慌」、「所有」、「労働組合」等は、西洋起源の社会経済思想の代表的術語であり、今日では日常語でもある。しかし1880年代前半の英和辞典には英語術語はあってもこうした翻訳術語は存在しない。ではいつ頃、これらの術語は字引に登場し、当初はどのような文脈で用いられ、定着することになったのか。『共産党宣言』はマルクス主義固有の術語だけではなく、英仏の啓蒙思想や初期社会主義思想への言及を多数含むことから、西洋近代社会経済思想を代表する術語を相当数網羅でき1904年の孝徳+堺訳以来80点を超える各種翻訳が存在し、その変容の歴史的経過を確認することも可能である。 そこで本研究では、具体的研究課題として次の3点を掲げる。(1)『共産党宣言』を中心に重要術語を抽出し、その初出時期、代表的な用例を探索する。(2)『共産党宣言』初訳以降の訳語訳文の変化を検討する。(3)中国での初訳が孝徳+堺訳からの重訳であったことに着眼し、これを起点にその後の中国語訳と日本語訳との乖離を整理する。その際、「国民」・「国家」の「民族」への変更や「暴力」の追加などにあらわあれた両訳書の乖離の原因を考察し、西洋起源の社会経済思想が、アジア、特に日中両国で定着普及する過程の一端を解明する。 平成23年度は経済学史学会第75回全国大会で、独自のセッション「1910~20年代におけるマルクス/エンゲルス著作の翻訳=普及」をもうけ、この2年間の研究成果を大村および久保を中心に紹介した。また19世紀中葉から末に日中両国および米国で刊行された代表的な英語辞典(英和、英華、英々)を時系列で検討することによって、関連術語の初出時期を詳細に探索し、公表に向けた準備を進めた。さらに昨年の国際学術検討集会での一連の報告を改稿・補完して専門学術誌『マルクス・エンゲルス・マルクス主義研究』(「日本マルクス/エンゲルス研究者の会」機関誌)第53号で公表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
3月11日に発生した東日本大震災の影響で、23年度は、本格的な研究再開が秋以降になってしまったことによる。秋になっても、東北大学の図書館が満足に使えないこと、パソコンやHDDの重大事故(廃棄を余儀なくされた)からの回復を優先しなければならなかったからである。
|
Strategy for Future Research Activity |
東日本大震災の影響で「やや遅れている」現状は否めないが、すでにパソコンやHDDの復旧は果たし、23年度末に、新たに研究課題に直結する相当量のデータを蓄えることができたので、今年度はこれらを整理することから開始し、当初の研究課題全体の達成に、研究補助者要員を増員するなどして、取り組むことになる。全体計画中やや遅れている部分は、術語用例の整理なので、増員する研究補助者には優先してこの整理に当たらせ、当初の計画を完成年度内にやり遂げる予定でいる。
|
Research Products
(12 results)