2011 Fiscal Year Annual Research Report
持続可能な地域医療システム構築に必要な資源再配分と費用便益構造の研究
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22330079
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
安川 文朗 熊本大学, 大学院・社会文化科学研究科, 教授 (90301845)
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Keywords | 地域医療 / 患者の受診行動 / 医療資源の不足 / 医療制度改革 / 高齢者医療 / 支払い意志 / 医療ネットワーク / 医療資源再配分 |
Research Abstract |
地域医療の概念の整理、および地域医療における患者の意識と医療機関選択に関する基礎的分析を実施しその成果を国内、国際学会にて報告した。また、医師、看護師を交えた研究会を定期的に開催し、地域医療の再構築を議論する前提となる「医療崩壊」の実態、病院と在宅医療との連携の実態、地域医療情報ネットワークの形成実態などを議論した。 国内における調査研究と並行して、海外の地域医療再編の動向についても調査を実施した。カナダでは地域における医療者不足の解消と医療提供体制の効率化を目指した、ITの活用による医療支援者(Health Assistants)の役割拡大プロジェクトに参加し、データ収集などの具体的な方法論を当地の研究者と議論するとともに、高齢者のホームケアに向けた自立支援(PCリテラシー)の資源としての住民ボランティアの参加状況を視察した。また、中国における医療制度改革の動向から、中国の地域医療におけるプライマリ・ケアから高次ケアまでの連携の問題について中国の大学研究者と議論し、共同研究態勢を構築した。 以上の調査研究から、1)地域住民(若者~高齢者)の地域医療に対する意識は、局住地域を中心としたプライマリ・ケアの範囲を想定したものであり、そのなかで自分が一番利便性の高い受診行動を選択する傾向があること、2)高齢者の医療制度そのものに対する意識は巷間言われるような消極的なものではなく、相応の費用負担を進んで行う意志を伴った、将来の医療制度設計に対するコミットメントがみられること、3)地域医療の推進には、医療者や施設等の専門資源のみならず、学生や地位住民の参加による高齢者の生活基盤向上の取り組みが重要であり、それを支援するシステムの構築が求められること、4)特に病院と在宅医療の連携に関して、医学的リスクの解消だけでなく、生活上のリスクの軽減解消を目指した、医療支援者を含む医療資源の再配分が考慮されるべきであること、が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画には、国内4~5か所の地域医療先進地域での実態調査が挙げられていたが、現地の事情等によりそれらのうちの数か所の調査がまだ実施されていない。また、国外調査が付加されたため、その分の時間的ズレを含め、今年度研究にて遅れを調整する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方法として、1)国内の指定地域(大阪、札幌等)における地域医療推進の実態分析と資源再配分のモデル構築を進めるとともに、2)分析結果として挙げられた医療資源と、これまでの調査研究から示唆された非医療的資源の双方の再配分の在り方について、その費用便益評価を含めた具体策を提言することで、本研究課題の中心課題である「持続可能な地域医療のすがた」を明確にしていきたい。
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