2010 Fiscal Year Annual Research Report
取引の一時性・季節性そして空間性がもたらす貨幣間の補完性についての国際共同研究
Project/Area Number |
22330102
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
黒田 明伸 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (70186542)
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Keywords | 貨幣 / 補完性 / 多元性 / 季節性 / サーチ理論 / メゾスコピック / 国際研究者交流 / 多国籍 |
Research Abstract |
本プロジェクトの基本概念である貨幣間の補完性という視点はフランスの経済学者・人類学者から注目され、研究代表者黒田明伸は11月より12月にかけてパリ第十大学に客員教授として招請された。招請期間中8カ国の研究者を集めて本プロジェクトの国際ワークショップが高等師範学院にて開催されたほか、黒田の貨幣研究に関する討論シンポが同大学にて催された。世界史全体にわたるそれらの議論をつうじて、小額通貨の需要に地域性が伴っていて、かつ強い季節性が認められること、その地域の社会関係のあり方が取引における通貨依存か信用依存かの分岐となることが明らかとなった。また複数通貨の可能性を示すサーチ理論との関連づけ、そのサーチ理論も含め、通貨の多元性を想定しながら価値尺度の方の多元性を想定していない貨幣理論研究の限界の指摘、マクロでもミクロでもないメゾスコピックな取引者間のクラスターの類型化の有効性、といった理論研究への貢献も展望されつつある。そのほかロンドン市大学での紙幣に関する学会で前近代東アジアの紙幣、成均館大学(ソウル)でのシンポ「伝統中国商業文化と現代市場秩序」で信用と通貨の関係、社会科学高等研究院(パリ)で日本中世貨幣史について、それぞれ本プロジェクトと関わらせた内容の講演を行った。また黒田は英国において1960年代に行われた流通硬貨サンプル調査の原資料の調査をロンドンで、また清代の商店の帳簿や宗族の祭祀決算簿を北京で、20世紀初期の銀行の支店報告を上海でそれぞれ調査した。
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Research Products
(7 results)