2012 Fiscal Year Annual Research Report
取引の一時性・季節性そして空間性がもたらす貨幣間の補完性についての国際共同研究
Project/Area Number |
22330102
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
黒田 明伸 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (70186542)
|
Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 国際研究者交流 米国 フランス / 貨幣 / 季節性 / 地域性 / 匿名的社会関係 / 東アジア / 中国 / 小農 |
Research Abstract |
黒田明伸は7月ステレンボッシュ(南アフリカ)開催の16回世界経済史学会にて部会「匿名的だが多元的な貨幣―単一通貨が支配しなかった理由」を主宰。黒田の「1935年中国に於ける紙幣本位制」もふくめ8カ国から10報告者と1コメンテーターを得た。古今東西をカバーして示した「歴史上通貨は常に不足の傾向にあった」との知見は他の部会でも言及されており相応の反応を得た。 9月には国際会議「世界的視野から再解釈する東アジア経済史」をイェール大学にて開催。1日目「スミス的分業を越えて」は黒田「中国における小農経済と市場の多元性」、谷本雅之「近代日本農家経済における労働配分」、鈴木淳「明治日本と清中国の海軍工廠の比較」、F Drixler「徳川日本における福祉機構の財政基盤」、D Howell「後期徳川日本における小農経済の意味」、E Koll 「民国期中国における経済制度・基盤としての鉄道」の報告とD Botsman (日本史) P Perdue (中国史)からの評論を得た。2日目「世界的視野における東アジア貨幣史」は黒田「中国、日本、そして世界史における貨幣間の補完性」、E Kaske「19世紀中国における捐納と貨幣」、P Baubeau「19世紀におけるフランス紙幣」、D Weiman「恐慌と支払い網の断絶―1893年と1907年の合衆国」、B Theret,「現代連邦政治における財政貨幣間の補完性の貨幣的経験」の報告とN Lamoreaux (経済学), W Goetzmann (経営学), J Guyer (人類学), G Depeyrot (考古学)からの評論を得た。会議を通して農業の季節性などによる市場の多層性と地域性を不断に現す貨幣の多元性との関連、また現金決済志向と匿名的社会関係との相関が浮き彫りにされた。 中国金融史関連の定期刊行物を購入。独文資料英訳と会議報告英文校閲に謝金。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2010年12月パリ高等師範学院にて「貨幣史と貨幣論の脱目的論化」(18報告3コメンテーター)、2012年2月東京大学にて「貨幣史と貨幣論の脱目的論化 II」(18報告2コメンテーター)、2012年9月イェール大学にて「世界的視野から再解釈する東アジア経済史」(11報告6コメンテーター)と3度の国際会議を3カ国にて開催した。かつ2011年4月ロンドン財経学院開催の第3回世界史ヨーロッパネットワーク会議にてパネル「地域的貨幣需要と世界的通貨供給―補完的関係」(4報告)、2012年7月ステレンボッシュ(南アフリカ)開催の16回世界経済史学会にて部会「匿名的だが多元的な貨幣―単一通貨が支配しなかった理由」(10報告1コメンテーター)を主宰。構造的な通貨不足、貨幣需要の時間的・空間的偏りにより生じる貨幣の地域性、といった本プロジェクトが提示した論点は世界的かつ学際的に認知されつつある。
|
Strategy for Future Research Activity |
2013年12月パリ社会科学高等研究院にて同研究院の協力を得てワークショップ「貨幣の質」を開催する。各国から報告者を招き、貨幣と社会を二分論的にとらえる枠組みを超えた視座の提示を目指す。 2013年5月にはパリとマドリッドの国際会議にて中国の銅銭と銀両制度について報告予定。6月にハーグでの第2回国際補完貨幣制度学会に招請され世界史における貨幣の地域性についての基調報告を行う。10月にはイスタンブルでのアジア研究の国際学会においてアジア近世王朝の貨幣制度比較について報告予定。
|
Research Products
(7 results)