2011 Fiscal Year Annual Research Report
社会構造と「価値観」に関する実証的国際比較研究ー「信頼感」との関連性を中心に
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22330154
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
佐々木 正道 中央大学, 文学部, 教授 (30142326)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉野 諒三 統計数理研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (60220711)
安野 智子 中央大学, 文学部, 教授 (60314895)
森 秀樹 兵庫教育大学, 学校教育研究科(研究院), 准教授 (00274027)
首藤 明和 兵庫教育大学, 学校教育研究科(研究院), 准教授 (60346294)
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Keywords | 信頼感 / 価値観 / 国際比較 / 意識調査 / 実証的研究 |
Research Abstract |
21 世紀のグローバル化・情報化社会における「価値観」の新たな研究は緊要の研究課題であり、リスク社会の拡大に伴う相互の「信頼」の構築は緊要の課題である。我々は基盤(A)(平成19~21年度)により「信頼感」について中位と低位レベルの5ケ国で意識調査を実施し、新たな「信頼感」尺度の開発等の研究成果を上げた。そしてこの調査結果から、「信頼感」について高位レベルの国において「信頼感」と「価値観」の関連を解明する必要があるとの結論に至った。本研究では、本年度「信頼感」の高中低位レベルの国で「価値観」との関連性を明らかにし、「信頼感」に関する高次の社会学的理論構築を試みた。そこで、過去10年の意識調査から、「信頼感」について高位レベルといわれている国の中から、面接法によるオムニバス形式の調査が可能で、今年度の予算(委託調査費の範囲内で調査が実施できるフィンランドを調査対象国に選んだ。 本年度の研究実績 1)フィンランドにおいて面接による本調査をヘルシンキ市の調査機関に委託し実施した。(平成24年5月)a) 調査対象となる全国87地点の調査対象者のサンプリング調査を実施した。b) 本調(クォーター法により20才以上の成人から881サンプルの有効回答を確保)を実施した。2)データ・クリーニング及び最終データ・ファイルの作成を行った。3)主にコレスポンデンス分析に基づきデータ解析と検討を行った。4)調査の分析結果と既存の「価値観」に関する調査データとの比較検討を行った。その結果調査対象国によって「信頼感」と「価値観」に関して類似の意識構造を持つ国と相違がある国に峻別できることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度に始まった本研究は、比較調査対象国のすべての国において全国調査をランダムサンプリング法とクォーターサンプル法により実施することができ、調査実施に関しては当初の計画通りに目的を達成することができた。分析において少々時間を要しているものの、概ね順調に推移している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で得た知見をもとに、「信頼感」と「価値観」との関連について「信頼感」が高中低レベルの国の比較分析をさらに発展させる。特に、「信頼感」の形成過程とその「価値観」との関連解明を目標に、この緊要の課題に総合的に取り組む。 そこで本研究では、1)我々が開発した「連鎖的比較調査法」という国際比較調査の統計的手法を用いて「信頼感」に関する多次元的尺度の精度を高めることを目指す。 2)「信頼感」の体系的比較分析を対人関係、社会集団、宗教、文化・社会システムの4つのレベルに分けて行い、「信頼感」の形成過程を解明する。3)「信頼」に関する諸理論、社会変動論、近代化-脱(または再帰的)近代化論、収斂理論、グローバリゼーション、宗教の世俗化などの社会科学の諸理論を踏まえ、新たな理論構築のための検証可能なモデルを設定し検証する。4)4年間の研究の総括を行い、報告書を刊行する。また研究成果について、国内外の研究会・学会・専門誌等で発表する。
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