2010 Fiscal Year Annual Research Report
社会学的モノグラフ研究の復権――シカゴ学派からの出発
Project/Area Number |
22330163
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Research Institution | Nara University |
Principal Investigator |
中野 正大 奈良大学, 社会学部, 教授 (70039783)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宝月 誠 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (50079018)
加藤 一己 愛知大学, 文学部, 准教授 (10214363)
高山 龍太郎 富山大学, 経済学部, 准教授 (00313586)
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Keywords | 社会学方法論 / シカゴ学派 / モノグラフ / 社会調査 / 社会学史 |
Research Abstract |
研究代表者を中心に「シカゴ社会学研究会」を年3回を開催した。初年度にあたる今年度は、『ヨーロッパとアメリカにおけるポーランド農民』『科学としての社会学入門』『都市』などの基本テキストを中心に「シカゴ学派モノグラフの方法論の再検討、および、理論的視点とキー概念の明確化」をおこなった。シカゴ学派による社会の捉え方の特徴は、「移動」「空間」「社会生活」への着目である。人びとが生活する空間は、ある種の社会移動の結果として定まり、個人が利用できる資源の種類や量を規定する。その一方で、人びとは、空間によって規定された資源を主体的にもちいて、独自の社会生活を創りあげる。シカゴ・モノグラフは、こうした人びとの営みについて、R.E.パークが「自然地域」と呼ぶ「特徴ある小さな空間」に焦点を合わせながら、その社会過程の全体像を包括的に描こうとした。こうしたシカゴ・モノグラフの方法諭は、必然的に折衷的になる。人びとの移動や空間配置のように数量化が容易で決定論的に捉えやすい社会過程については、統計や地図作成という実証主義的な方法がもちいられる。こうした方法論は、E.W.バージェス「都市の発展」論文に始まる人間生態学の発想に裏付けられている。一方、人びとが独自の社会生活を創りあげる相互作用の過程については、インタビュー、参与観察、ドキュメント分析などの質的調査法が積極的にもちいられ、人びとの意味世界と具体的な活動の諸相が明らかにされる。こうした方法論は、都市を「一種の心の状態」と考えるパーク「都市」論文に始まるエスノグラフィーの伝統につながっていく。以上の二つの方法論が交差する地点が、モザイク状に都市に広がる「特徴ある小さな空間」である。こうした空間を研究の単位にするという戦略によって.シカゴ・モノグラフは、人びとの織りなす社会過程を重層的に捉えることに成功している。
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Research Products
(5 results)