2011 Fiscal Year Annual Research Report
教育資源調達手法総動員による教育組織パフォーマンス向上施策の学際的研究
Project/Area Number |
22330214
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高見 茂 京都大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (60206878)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小松 郁夫 玉川大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (10130296)
|
Keywords | 寄付 / 社会貢献 / CSR / 同窓会 / 知財戦略 |
Research Abstract |
平成23年度は22年度に続き、スクールファンドを設置していると考えられる学校(コミュニティスクール、基金を設置している大学)についてのアンケートは当初計画通り実施できた。しかし同窓会を通じた寄付等に関する意識調査については、同窓会名簿の公開に関する制約が厳しく、平成23年度内に同窓会名簿が入手できず質問紙調査が実施できなかった。平成24年度に各同窓会事務局に交渉したが賛同を得られなかったため、一般公開されている別の資料(役員四季報:東洋経済新報)により、名前の掲載されている企業役員名簿の中から京大卒業生を1000名拾い出し、質問紙を郵送し、200人程度の方から回答を頂いた。 京都大学の近年の教育・研究・社会貢献活動についての認知度は総じて低く、OBからすると今の京都大学の状況について分からないとの回答が多く見られた。同窓会関係の情報発信を強化することが重要な課題であることが浮き彫りに浮かびなったと言える。また法人化以降、京都大学の財務構造が大へん厳しい状況にあることも殆ど伝わっていない状況であった。企業としてのCSRについては高い関心を持っておられるものの、国内の教育部門-特に大学へのCSR活動としての意識はさほど高くはない事実が明らかになった。しかし、大学の行う社会貢献活動への参加については、極めて高い関心のあることが分かった。またそのためには、大学の研究・教育・社会貢献の関連についての明確な情報の提供、貢献活動に参加する直接的な負担の軽減といった条件の整備が必要だとのことも分かった。 公財政支出教育費の削減が続く状況の中で、安定的な財源確保のためには、大学の知財戦略の強化、世論喚起・政治過程への働きかけ、使途目的の明確化による卒業生・父母・地域・企業からの寄付の導入、といった戦略の有効性が明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スクールファンドを設置している学校の状況、同窓会の意識調査までは何とかデータを取得することができた。同窓会については当初の目論見通りの調査をできなかったが、修了・卒業者が母校の現状について如何なる認識を持ってられるかを客観的に把握できた。また公財政支出教育費の削減の中でその枠を超える財源調達手法としての寄付の有効性、効果的に活用するための条件等についても新たな知見を獲得することができた。やはり資源制約が厳しくなった場合、公財政で支えられる部分の削減を寄付要求の理由にすることは効果的でなく、大学の社会貢献の部分-この中には直接的な社会貢献に限らず、研究・教育を通じてなされる社会貢献もあるが、そこに参加を求めるという戦略の有効性を把握できた点は大きな成果であった。また修了・卒業生が現在の京都大学の状況についてあまり認知していないという現状を踏まえ、新たな広報戦略を考える契機となったことも研究成果の一つであると思われる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今回の修了・卒業生対象の調査では、同窓会が発行して一般に頒布している名簿でも勝手に住所・氏名を使って調査票の送付をすることは許可されなかった。同窓会の幹事会・理事会の承認が必要という条件があり、個人情報保護の問題による研究推進の制約が極めて厳しく、阻害要因となった。今後研究目的での個人情報の使用を認めるような信頼関係に基づく枠組みが必要かと思われる。また同窓会の有力者との個人的信頼関係の構築も課題であると思われる。
|