2012 Fiscal Year Annual Research Report
「包括性」と「多元性」に基盤をおいた社会科カリキュラムの再構築
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22330241
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
谷口 和也 東北大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (60281945)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉村 功太郎 宮崎大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (00270265)
溝口 和宏 鹿児島大学, 教育学部, 教授 (30284863)
草原 和博 広島大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (40294269)
宮腰 英一 東北大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (50166138)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | シティズンシップ教育 / カリキュラム開発 / 歴史教育 / 多元性 / 包括性 |
Research Abstract |
本年度は、四年間の研究機関の三年目にあたり、最終年度へ向けて、これまでの研究の見直しと一部修正を行った。本年度の研究実績は、以下の三つとなる。 第一に、「包括性」と「多元性」のバランスを取った歴史カリキュラムについて、現在からみた歴史ではなく「包括性の拡大過程としての歴史カリキュラム」で、現在の国家をまとまりとした自国史を肯定しながらも、今後の国際化や多文化化にオープンエンドな自国史のカリキュラムを作成できるとの提言を行うに至った。この過程で、アジア諸国の教科書における自国史が、同様の構造を持つのではなく、異なった原理から「自国史」を描き出していることを明らかにした。 第二に、シティズンシップ教育に関して、個人、団体、国際社会と、主権国家との関係性が、多文化共生社会をうたった諸国の教科書においてもさまざまな混乱がみられることを指摘し、日本の公民的分野の教科書における問題点も明らかにした。これは、Kazuya TANIGUCHI, 'Inclusive Citizenship in Japanese Textbooks: Shift in the foundations of citizenship'と題して英語で執筆し、現在執筆中である。 第三に、各国のシティズンシップ教育観がどのように異なるかを明らかにするために、地域における社会参画を通じて国や国際社会と自分たちの関係を子どもたちがどのようにとらえているか明らかにする試みを始めた。この実証研究は、平成24年度、日本における五つの小中学校で実践し、今後、海外との比較研究に発展させる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、「①成立史研究クラスター」「②地理的包括性クラスター」「③世界史・政治史クラスター」「④シティズンシップクラスター」の四つからなる。この四つのクラスター間で、やや進度に差がある。 「③世界史・政治史クラスター」「④シティズンシップクラスター」は一年目、二年目から活発に口頭発表や論文執筆を重ね、計画以上に順調に進んだ。さらに、「包括性」と「多元性」のバランスを得るようなカリキュラム開発に関しても、一定の提言が可能なような理論的結論を得ることができた。また、「①成立史研究クラスター」も、どうように活発に成果の公表を重ねたが、2013年2月に、イギリスにおいて発表された新しいナショナル・カリキュラムが、これまでと異なる「包括性」と「多元性」の関係を持つため、このまま最終年度で結論を出す前に、再検討を行う必要性が出てきた。 一方、「②地理的包括性クラスター」は、他の三つに比べ、やや遅れ気味である。今後は、ヨーロッパ圏か東アジア圏での検討に研究方法を絞って、一定のカリキュラム原理の提言ができるように研究方針を修正する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
「研究実績の概要」と「現在までの達成度」にあるように、最終年度である平成25年度は、次のような研究を行う予定である。 まず、「③世界史・政治史クラスター」「④シティズンシップクラスター」に関しては、印刷中の英語論文を含め、7月の国際学会での発表や、6月及び9月の全国学会での発表などの成果公表と、報告書でのカリキュラム原理の発表を行う。あわせて、間に合えば、子どものシティズンシップ観の国際比較研究の結果と開発したカリキュラム原理の関係性について分析をする。 「①成立史研究クラスター」は、2013年2月に発表されたナショナル・カリキュラムの分析を行って夏ごろの投稿に向けて論文執筆を行う。しかしながら、新しいナショナル・カリキュラムの分析は、単独の論文として位置づけ、報告書にはそれ以前のアジェクボ・レポートまでの「包括性」と「多元性」の関連付けの試みについてのみ言及する予定である。 「②地理的包括性クラスター」については、特に「地理的な包括性」と「民族の海外進出の描写」を視点として、アジア諸国の教科書分析を行い、その原理と問題点の分析から、「包括性」と「多元性」のバランスを取ったカリキュラム原理の理論的提唱を目指す予定である。
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Research Products
(10 results)