2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22340003
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
齋藤 秀司 東京工業大学, 大学院理工学研究科, 教授 (50153804)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 数論幾何学 / モチフィックコホモロジー / 高次元分岐理論 / Swan conductor |
Research Abstract |
有限体上の多様体上の滑らかな層の存在問題についてDeligneが提出した予想を部分的に解決することに成功した。Deligneの予想とは,有限体上の多様体X上の滑らかな層Fを,X上のすべての曲線CたちへのFの制限F_Cからなるデータと分岐に関する条件から再構成できると主張するものである。これは有限体上の多様体の基本群が,Xの閉点と曲線たちの情報のみによって理解できるという主張とも解釈でき,Xの基本群を理解するうえで非常に強力な道具となるものである。当該研究ではこの予想を層の階数が1の場合に解決することに成功した。これを達成するために,高次元スキームの分岐理論を「モヂュラス付きのモチフィックコホモロジー」を用いて研究する新しい手法を開発した。モチフィックコホモロジーとはスキームにたいして定義される重要な幾何学的不変量であるが,当該研究ではこれを高次元スキームの分岐理論という全く別の理論へ応用するために,スキーム上の有効カルティエ因子をモヂュラスとする「モヂュラス付きのモチフィックコホモロジー」なる新理論を構築した。さらに高次元スキームの分岐理論において重要な道具である Swan conductorを精密化するmotivic Swan conductorを定義した。これらを用いて,Xのモムヂュラス付きモチフィックコホモロオジーとXのモムヂュラス付きアーベル基本群(高次元分岐理論を用いて定義される)との同型を示すことに成功した。Deligneの予想の階数が1の場合はこの結果から従うものである。当該研究の成果の重要性は,モチフィックコホモロジーの理論と高次元分岐理論というこれまで関連性が見られなかった二つの理論を融合する新理論を構築し,これをDeligneの予想という数論幾何学における重要な予想に応用し成果を得たことである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
モチフィックコホモロジーの理論と高次元分岐理論というこれまで関連性が見られなかった二つの理論を融合する新理論を構築したのみならず,さらにこれをDeligneの予想という数論幾何学における重要な予想に応用し成果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
Deligneの予想を一般の場合に解決することが大きな目標であるが,このためにはDrinfeld-Lafforgueが構築した有限体上の関数体のLanglands対応の理論を用いる必要がある。当該研究で開発したmotivic Swan conductorの手法をLanglands対応の理論と融合させることにより予想を解決することを目指す。もう一つの目標は,motivic Swan conductorの手法を代数的サイクルのp-進的deformation理論に応用することである。これは,形式的スキーム上の代数的サイクルの代数化の問題への応用が期待される。
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