2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22340027
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
西畑 伸也 東京工業大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (80279299)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松村 昭孝 大阪大学, 情報科学研究科, 教授 (60115938)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | オイラー方程式 / ポアソン方程式 / 双曲型保存 / ボーム・シース条件 / 境界層 / 緩和時間 / 半導体 / プラズマ |
Research Abstract |
本研究課題は、半導体の流体力学モデルやプラズマのモデル方程式等、数理物理に現れる双曲-楕円型非線形偏微分方程式系の時間大域解の存在と、その漸近挙動を解明することを目的としています。量子効果を考慮した半導体のモデルに対して、有界領域上で時間大域解が一意的に存在し、その漸近挙動が定常解で与えられることを示しました。また、その収束の早さが指数関数的であることも証明しています。さらに、半導体の量子モデルの緩和時間極限として、量子ドリフト拡散モデルが得られることも示しています。 一方、プラズマのモデル方程式(ボーム・モデル)に対する研究では、プラズマ物理でシース(鞘)と呼ばれる境界層が、数学的には半空間上の平面定常解と解釈できる現象であることを示し、シース形成の条件として知られていたボーム条件が、平面定常解が存在して漸近安定になる為の必要十分条件であることを証明しています。この研究を発展させ、プレ・シースと呼ばれる現象は、ボーム・モデルに電位準中性を仮定して得られるラングミュア・モデルの希薄波に対応することが、部分的にですが解明されました。さらに、シースに関する数値解析では、過去の研究で用いられていたスキームと比較してロー、によるスキームを用いたほうがより良い精度が得られることを確認しました。 やはり、双曲-楕円型非線形偏微分方程式系である輻射気体の方程式に対しては、不連続な初期値に対し弱解が時間大域的に存在し、滑らかな進行波解に漸近収束することを既に示していますが、あらたに初期条件に応じた収束の速さを求めました。 本研究課題に関連して、今年度は双曲-放物方程式型の一般的な方程式系の定常解の存在とその漸近安定性を証明しました。この研究で開発した手法は、双曲-楕円型方程式系にも応用できると考えられます。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究概要で述べている通り、プレ・シースに関する研究の成果として、空間次元に応じて解の挙動が異なることを示唆する結果が得られています。また、数値解析を用いた研究にも着手し、上で述べた結果も得られています。また、双曲-放物方程型の一般的な方程式系を使う準備として行った双曲-放物方程式系でも成果をえています。以上は、この1年間の成果としては、十分なものであると思われます。
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Strategy for Future Research Activity |
プレ・シースと呼ばれるシースとプラズマつなぐ中間領域は、ボーム・モデル対して電位準中性を仮定して得られる双曲型方程式系(ラングミュア・モデル)の希薄波に対応することが、解の取りうる漸近状態を解析することで示されています。一方、数値計算による解析では、この結果は空間次元が2以上で初めて成立し、空間次元を1とした場合には成立しないことを示唆する結果も得られています。したがって、空間1次元では、解が爆発し大域解が存在しないことが予想されます。こうした、この空間次元に応じた解の挙動の違いを数学的に解析し、シースからプラズマに至る遷移の様子を解明することが当面の課題です。さらに一般的な双曲-楕円方程式系に対して、解の大域的構造の研究をおこなう予定です。この研究では、最近得た双曲-放物方程式系に対する手法が応用できると思われます。
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Research Products
(8 results)