2011 Fiscal Year Annual Research Report
時間反転対称性の破れ探索実験用CsI(Tl)カロリメータの改良
Project/Area Number |
22340059
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
清水 俊 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (60294146)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
五十嵐 洋一 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 研究機関講師 (50311121)
堀江 圭都 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 技術職員 (80432467)
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Keywords | ガンマ線 |
Research Abstract |
J-PARC TREK実験は読み出し方法が改良されたCsI(Tl)カロリーメータでπ0を測定することで時間反転対称性の破れを探索することを目的とする。このカロリーメータはKEK-PS E246実験のために開発されたもので、TREK実験に使用するためには高係数の状況下(50kHz)で動作させる必要がある。そのため、従来のPIN型の光センサーからAPD又はMAPD型の光センサーに読み出し方法を変更する。本研究は、東北大学の核理研とJ-PARC施設を用いて推進する予定であったが、東日本大震災の発生によって予定していた開発が極めて困難となってしまった。従来は平成23年度にビーム照射実験を行なう予定であったが、施設の破壊をうけて計画を変更し、平成24年にカナダ・TRIUMF研究所にてビーム照射実験を行なった。TRIUMFでは2次ビームラインによって運動量がそろったミュオン、パイオン、電子などの荷電粒子が供給され、これらをCsI(Tl)カロリーメータに照射し出力信号をフラッシュADCデータに取り込むことに成功した。フラッシュADCはアナログ信号の波形を記憶する装置であり、2つの信号が重なってしまった場合でも分離が可能になる。ただし、分離をする場合、信号の形を記述できるモデル関数が必要となり、本研究の大きなテーマの一つになっていた。結果として、優秀なモデル関数を構築することに成功し、CsI(Tl)を高計数率で動作させることが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
J-PARC TREK実験は読み出し方法が改良されたCsI(Tl)カロリーメータでπ0を測定することで時間反転対称性の破れを探索することを目的とする。このカロリーメータはKEK-PS E246実験のために開発されたもので、TREK実験に使用するためには高係数の状況下(50kHz)で動作させる必要がある。そのため、従来のPIN型の光センサーからAPD又はMAPD型の光センサーに読み出し方法を変更する。今年度の研究は、(1)カナダのTRIUMF研究所で発生される陽電子ビームを実際にCsI(Tl)検出器に照射することによって、新しい読み出しシステムの計数率耐性について調べる、(2)J-PARC K1.1BRにてCsI(Tl)検出器に直接たたいてしまう粒子を実測し、将来の実験が実現可能か見積もる、(3)宇宙線を利用したCsI(Tl)トリガー用TOFカウンタの製作を目的としている。TRIUMF研究所では、供給されるパイオン、ミュオン、陽電子を飛行時間(TOF)測定によって分離し、陽電子のみを選び出すことが可能である。また、陽電子強度は1kHzから300kHzの広範囲で可変であるため、ビーム強度依存性を確認するには極めて有利であった。またJ-PARCでは荷電K中間子ビームを最適化した状況でのbackground測定をおこなうため、将来実験を見積もるのに極めて信用度の高いデータを収集できた。結果として、TOF検出器で粒子識別することで、CsI(Tl)の性能は十分であり、将来実験にも利用が可能と結論できた。
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Strategy for Future Research Activity |
J-PARC TREK実験は読み出し方法が改良されたCsI(Tl)カロリーメータでπ0を測定することで時間反転対称性の破れを探索することを目的とする。このカロリーメータはKEK-PS E246実験のために開発されたもので、TREK実験に使用するためには高係数の状況下(50kHz)で動作させる必要がある。そのため、従来のPIN型の光センサーからAPD又はMAPD型の光センサーに読み出し方法を変更する。本研究は、東北大学の核理研とJ-PARC施設を用いて推進する予定であったが、東日本大震災の発生によって予定していた開発が極めて困難となってしまった。平成23年度に東北大学におけるビーム照射実験が全体の開発の鍵となるべきであったが、場所をカナダ・TRIUMF研究所に移すことで平成24年度に照射実験をおこなうことにした。東北大学ではエネルギーが可変であるtagged photonと呼ばれるガンマ線ビームを利用する予定であったが、TRIUMFでは2次ビームラインによって運動量がそろったミュオン、パイオン、電子などの荷電粒子を用いる。得られる研究成果としては、東北大学に劣らぬ結果が期待できる。一方、外国における研究ということで、国内の実験とは違った不便さも十分考えられる。TRIUMF所属の現地スタッフと議論を密接におこなうことで、すぐれた研究結果が得られるようあらかじめ十分な注意をしておく必要がある。
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Research Products
(2 results)