Research Abstract |
分子構造を決定するために用いられる核磁気共鳴(NMR)分光法は,化学・生物学をはじめとする広い学問領域に定着している.NMR分光法を光の周波数領域に拡張した「二次元分光法」が,物質の励起状態を探査する有力な手法として,近年注目を集めている.本研究では,紅色光合成細菌の光合成色素蛋白複合体を対象とし,二次元分光法による励起エネルギー伝達経路を解明を行い,「自然が創製した光電変換・エネルギー伝達機能は如何にして高効率を達成しているか?」という問いに答えることを目標とする. 研究初年度である本年度は,申請者が構築したサブ20フェムト秒光源(非同軸型光パラメトリック増幅器:NOPA)を改造し,可視域の二次元分光装置の構築を行い,そのパフォーマンスの測定と最適化を行った.可視二次元マップの取得方法としては,四光波混合配置が一般的に用いられるが,測定配置がより簡便であり,かつ前述の方法では得られない情報が取得できる利点に着目して,ポンプ・プローブ配置を採用して,光源・検出系,さらには試料の濃度など実験条件の最適化を行うために,基礎データの取得を行った.測定試料としては,研究開始半年間はレーザー色素を用いた簡単な条件出しを行ったが,年度後半には,代表的な光合成色素であるβ-カロテンからの信号の取得にも成功した.本年度の一連の測定により,装置の改良点も明らかとなったが,この点については次年度への継続課題とする.更に本年度は,二次元分光法の比較データとするために,光合成色素の超高速光学応答について,特に電子と格子振動に着目した基本データの取得も行った.研究成果の一部は,国内外の学会講演や学術論文として公表した.
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