2011 Fiscal Year Annual Research Report
可視二次元分光技術の確立と光合成励起エネルギーフローの人為操作
Project/Area Number |
22340085
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
杉崎 満 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (20360042)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 律子 大阪市立大学, 複合先端研究機構, 特任准教授 (80351740)
橋本 秀樹 大阪市立大学, 複合先端研究機構, 教授 (50222211)
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Keywords | 超高速分光 / コヒーレンス / 二次元分光 / 光合成 / カロテノイド / クロロフィル / 色素蛋白複合体 / エネルギー移動 |
Research Abstract |
分子構造を決定するために用いられる核磁気共鳴(MMR)分光法は,化学・生物学をはじめとする広い学問領域に定着している.NMR分光法を光の周波数領域に拡張した「二次元分光法」が,物質の励起状態を探査する有力な手法として,近年注目を集めている.本研究では,紅色光合成細菌の光合成色素蛋白複合体を対象とし,二次元分光法による励起エネルギー伝達経路の解明を行い,「自然が創製した光電変換・エネルギー伝達機能は如何にして高効率を達成しているか?」という問いに答えることを目標とする. 研究2年目である本年度も引き続き,申請者が構築したサブ20フェムト秒光源(非同軸型光パラメトリック増幅器:NOPA)を拡張した可視域の二次元分光装置の最適化を行った.可視二次元マップの取得方法としては,ポンプ・プローブ型配置を採用した.これは,測定配置がより簡便であり,かつ一般的に用いられる四光波混合配置では得られない情報が取得できる利点をもつためである.測定試料としては,代表的な光合成色素であるβ-カロテンを用いた.興味深い新たな知見として,振電相互作用によると思われる超高速の応答が観測されたことが挙げられる.しかしながらこの起源を解明するためには,装置の更なる安定化を含め,慎重な追加実験と詳細な解析が必要と考えている. また,二次元分光法の比較データとするために,光合成色素の超高速光学応答について,特に電子と格子振動に着目した基本データの取得も上述の研究と並行して行った.研究成果の一部は,国内外の学会講演や学術論文として公表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでに取得したデータを解析した結果,安定した信号を取得するためには,装置の更なる改造が必要であることが分かった.来年度より,装置の改造を終えた上で本測定に入る予定であったが,この作業におそらく3カ月ほど要するために,当初計画よりも多少の遅れが出ている.
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Strategy for Future Research Activity |
これまで可視域におけるシグナル測定には,大量に試料を得ることが比較的容易であるという利点を生かし,代表的な光合成色素であるβ-カロテンを用いてきた.しかし,本研究で最も重要な点はカロテノイドからバクテリオクロロフィルへのエネルギー伝達のプロセスを可視化することにあるため,他のカロテノイドに関しても測定対象を広げていく予定である.測定を行う際に,装置の更なる安定化が必要となるため,信号測定と装置の改造を平行して行っていく予定である.
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Research Products
(17 results)