2011 Fiscal Year Annual Research Report
計算物理学的手法による低次元強相関電子系のスペクトロスコピーの研究
Project/Area Number |
22340097
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
遠山 貴巳 京都大学, 基礎物理学研究所, 教授 (70237056)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松枝 宏明 仙台高等専門学校, 総合科学科, 准教授 (20396518)
筒井 健二 日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究副主幹 (80291011)
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Keywords | 物性理論 / 光物性 / 密度行列繰り込み群法 / 厳密対角化法 / 低次元強相関電子系 |
Research Abstract |
本研究の目的は、計算物理学手法を駆使して各種先端スペクトロスコピーが与える情報を解明することで、低次元強相関電子系の示す多彩な量子現象の理解を目指すことにある。 1.格子系と結合したモット絶縁体の光励起状態の緩和ダイナミクスの解明:以前8格子点で計算したハバード・ホルシュタイン模型の光励起後の系の状態の時間発展を12サイトまで拡張し、格子自由度への励起直後の緩和の重要性を指摘した。また、動的密度行列繰り込み群法を用いて空間反転対称性の破れた有機物質に対する二次非線形光学応答の計算に着手した。 2.格子系と結合した低次元スピン系のスピン励起構造の解明:昨年度に引き続き、一次元J_1-J_2模型に格子変位(フォノン)を加えた模型を設定し、そのスピン励起構造を動的密度行列繰り込み群法を用いて調べるとともに、フォノンの分散関係に対する電子格子相互作用の効果を解明した。 3.電荷秩序状態を示す系や不純物・界面を含む不均一系に対する共鳴非弾性X線散乱の理論構築と電荷励起の解明:不純物とその周りの母体の共鳴非弾性X線散乱スペクトルを計算することで、不純物系の電子状態を解明し実験との比較を行い、よい一致を得た。また、軌道自由度が重要である鉄化合物超伝導体の共鳴非弾性X線散乱の理論を乱雑位相近似の範囲で計算し、実験に対する提案を行った。 4.時間分解角度分解光電子分光や時間分解ラマン散乱の理論構築と低次元強相関電子系の準粒子緩和プロセスの解明:昨年度に引き続き、ポンプ光照射後の角度分解光電子分光スペクトル、ラマン散乱スペクトルの時間依存性を厳密対角化法で計算するための手法の検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
4つの課題のうち、課題1~3に関しては順調に進展している。課題4に関しては、計算のための理論構築に対する困難が克服されていない。全体としては、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで同様に計画どおりに研究を推進していく予定だが、課題4に関しては、実際の計算を実行するためにはいろいろな角度からの検討が必要となっている。実験家との議論も進めることで、新しいアイディアを生み出し、実際の計算までこぎ着けたい。
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