2010 Fiscal Year Annual Research Report
エネルギー論的観点からの大気循環変動の再考察:新しい変動論の確立へ向けて
Project/Area Number |
22340135
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 尚 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (10251406)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡部 雅浩 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (70344497)
三瓶 岳昭 会津大学, 先端情報科学研究センター, 准教授 (50571775)
谷本 陽一 北海道大学, 地球環境科学研究院, 准教授 (00291568)
高薮 緑 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (10197212)
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Keywords | 気候変動 / 気象学 / 大気現象 / 力学モード / エネルギー変換 / ジェット気流 / 大気海洋相互作用 / テレコネクション |
Research Abstract |
1)夏季小笠原高気圧と南海上の台風活動との連関変動をもたらす「PJパターン」が,亜熱帯のアジアジェット気流から効果的に位置エネルギーを変換し,かつ付随する海面蒸発偏差と下層の水蒸気輸送収束偏差が積雲対流活動偏差を維持するよう働く「湿潤力学モード」の特性を有することを確認した.さらに,西方のモンスーン(対流降水域)と東方の亜熱帯高気圧に挟まれた他の4つの亜熱帯海洋域に,PJパターンと特性の類似する変動パターンが存在する事を確認した. 2)暖流と寒流の合流域である中緯度海洋前線帯にて維持される顕著な南北水温傾度と圏熱供給の南北差が,移動性高低気圧による南北熱輸送に抗して,地表気温の南北差を効果的に回復させるという「海洋傾圧調節過程」を提唱し,これにより海洋前線帯上に維持される地表傾圧帯が移動性高低気圧の繰り返し発達を可能にし,ストームトラックと渦駆動の極前線西風ジェットを維持することを数値実験により明らかにした. 3)我が国に寒波をもたらす大気循環偏差「WPパターン」に伴う亜寒帯極東域でのブロッキング形成が,他の地域のブロッキングとは異なり,惑星規模波動の振幅を減じさせ,北極成層圏を寒冷化させるよう働くことを発見した. 4)定在性波動と非定常擾乱による極向き熱輸送に一定の関係があることを見出した.また,夏季のジェット上のテレコネクションに対する強制過程を明らかにした. 5)海面における熱エネルギー交換の主要要素である潜熱・顕熱フラックスが亜熱帯・中緯度域の大気循環に与える影響を調べた.中緯度の亜熱帯循環系西岸における熱交換は大気境界層の変質を通して海面気圧や海上風に分布に影響を与えること,亜熱帯域の熱交換は海面水温の変化を通して局所ハドレー循環の維持に寄与していることがわかった.
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Research Products
(36 results)