2012 Fiscal Year Annual Research Report
高純度化・組織制御を用いた微細粒等方性厚膜磁石の開発と高トルク小型モータへの応用
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22360129
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
中野 正基 長崎大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20274623)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福永 博俊 長崎大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10136533)
板倉 賢 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (20203078)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 電気電子材料 / 厚膜磁石 / PLD法 / 多極着磁 / ミリサイズモータ / ナノコンポジット磁石 / 低速高トルク / 高速成膜 |
Research Abstract |
本申請では「高速成膜PLD(Pulsed Laser Deposition)法」を用い、「高純度化・組織制御」等の学術・工業的知見を利用した「等方性Nd-Fe-B系厚膜磁石」の特性向上と「厚膜磁石の形状・構造ならびに着磁性」に注目し、「高残留磁化を持つ等方性厚膜磁石の開発と面内多極磁化を利用した高トルク・小型モータへの応用」を計画した。 平成24年度は、「Nd-Fe-B系ターゲットに照射するレーザのエネルギー密度」に着目し、「集光レンズとターゲット間の距離」を変化させ、エネルギー密度を極めて増加させた条件下においてナノコンポジット厚膜磁石の作製を検討した。その結果、磁気特性において、保磁力値は目標値以上の値(400 kA/m以上)を再現性良く得る事は困難であったものの、残留磁化は目標値0.9Tと同程度の値を達成した。更に、この「高残留磁化・等方性厚膜磁石」を企業人の協力の下、小型モータ搭載に向けて「打ち抜き加工が可能である」事まで確認した。 これらの成果は、平成24年度の1年間の期間において、研究代表がが招待講演者として3件(トルコ・韓国・米国における国際会議)ならびに研究代表者がファーストオーサーとして論文3件(査読有り2件・解説論文1件)を発表した。加えて、国内・国際会議の一般講演(大学院生の発表含む)として社会に発信した。 残りの研究期間において、①保磁力増加を第一とした磁気特性の更なる向上ならびに②モータ搭載の実験を遂行する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24度は、22ならびに23年度に検討してきた「CuもしくはNb添加」を施した等方性Nd-Fe-B系厚膜磁石の結果を踏まえ、微細構造観察ならびに計算機解析による知見を活かし、昨年度に引き続き高残留磁化が期待されるナノコンポジット組成の試料に的を絞り、以下の項目に着目しながら更なる磁気特性の向上を検討した。 平成23年度の後半に一部スタートさせた「添加物を利用しない結晶粒の微細化手法」として「ターゲットに照射するレーザのエネルギー密度」に着目した。その際、「集光レンズとターゲット間の距離」を変化させることによりエネルギー密度を制御する実験を進めた。具体的には、ターゲット表面へのレーザの入射方法を(1) Just Focus を利用した成膜方法と(2) Defocusを利用した成膜方法に区分し、各々の手法の①成膜速度、②組成転写性を評価すると共にNd-Fe-BターゲットのNd含有量を調整する事により、ナノコンポジット組成の厚膜磁石の作製を試みた。本手法の特徴として、レーザのエネルギー密度によりターゲットより飛び出す元素の指向性に伴う「厚膜試料内の組成の揺らぎ」を結晶粒の微細化の駆動力とする点である。その際、「極短時間熱処理」も同時に導入し、より一層の結晶粒の微細化を図った。その結果,磁気特性において、残留磁化は目標値0.9Tと同程度の値を実現した。更に、この厚膜磁石の実機応用に向けて、打ち抜き加工などの成型に関しても可能であることを確認した。 上記のナノコンポジット厚膜磁石の「平均結晶粒径の観察」や「粒界相の元素の同定」を行ったところ、特異な微細構造が形成される事を確認した。今後その特徴を活かしながら、更なる磁気特性向上を図る予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
ここまでの研究を通じ得られたナノコンポジット厚膜磁石に関し、応用を鑑みると、残留磁化は目標値を満足するものの、保磁力が再現性良く目標以上の値に達することが課題として挙げられる。そこで、平成25年度は、ナノコンポジット磁石のハード相としてPr2Fe14B相の利用を検討した。これは、「Ndと一緒の鉱石(ジジム)の中で採掘されるPrが,Pr2Fe14B相として利用された際,その結晶磁気異方性定数がNd2Fe14B相に比べ大きな値を示すことに着目したものである。すなわち、大きな結晶磁気異方性を利用して保磁力の向上を図るものである。その一方で、Pr2Fe14B相の室温での飽和磁化値(1.56 T)がNd2Fe14B相の値(1.61 T)に比べ劣るため,残留磁化の低下が懸念されるものの、ソフト相であるα-Fe相の大きな飽和磁化を利用し、目標値0.9 T以上の値を保持する条件を検討する。更に得られた等方性厚膜磁石に面内多極着磁を施し、高トルク小型モータ(出力:10-30 mW, 重量:1g以下)へ応用し、そのモータにおける特性を電磁界解析の結果と比較検討する。
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