2011 Fiscal Year Annual Research Report
内在的ナノスケール不均質性に支配される金属ガラス力学特性に関する研究
Project/Area Number |
22360263
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
加藤 秀実 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (80323096)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 英司 東京大学, 工学研究科, 准教授 (70354222)
市坪 哲 京都大学, 工学研究科, 准教授 (40324826)
和田 武 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (10431602)
|
Keywords | 金属ガラス / フラジリティ / 破壊靭性 / 構造緩和 |
Research Abstract |
ナノスケール構造不均質性が報告されているPd-Ni-Cu-P系金属ガラスの動的緩和挙動を-120~290℃(Tg=302℃)において10^<-2~>10^2rad/sの範囲で測定し、この金属ガラスが発現する緩和モードについて調査した。この結果、ガラス遷移温度近傍に大きな損失を伴うα緩和、これから低温(高周波数)に側に、slow-β緩和、更に、-100℃以下に第3の緩和モードが観測された。それぞれの活性化エネルギーは、7.79eV,1.39eV,0.25eVであった。α緩和は5個程度の原子の協調運動、slow-β緩和は単原子ジャンプであると考えられる。最も低温で観測された第3の緩和モードは、原子周囲に形成した自由体積を介するラトリングを素過程にしたfast-β緩和が考えられる。しかし、文献値にはfast-β緩和の活性化エネルギーは数十meVであると報告されているため、本測定値はやや大きいと言える。よって、活性化エネルギーの小さいslow-β緩和との解釈も考えられ、構造的な不均質性を考慮して、今後更に考察を進める必要がある。 Pd-Ni-Cu-P系金属ガラスと同様に大きなslow-β緩和を示すPd-Ni-P系金属ガラスにArイオンを照射すると、Arが金属ガラス内にナノスケールに凍結されることがHAADF-STEM観察により明らかになった。Arの結晶金属内凍結の報告は既になされているが、通常50~300keVの高加速電圧が必要であった。しかし、今回の金属ガラスでは、4keVで生じることが大きな特徴である。このように金属ガラスにおいてArが容易に凍結した理由として、金属ガラス内に不均質性が発生しており、弱結合領域に入射したArイオンが凍結したものと考えられる。しかし、同様の実験をZr-Al-Ni-Cu系に行ったところ、Pd-Ni-P系に観測されたAr凍結は見られなかった。このZr-Al-Ni-Cu系金属ガラスは、明瞭なslow-β緩和を示さないことから、より均質性の高い構造に凍結されているものと考えられる。Pd-Ni-P系金属ガラスを通常の熱処理または、動的熱処理によっても凍結Arのサイズや体積分布が変化することから、凍結Arの分布調査のアプローチから金属ガラスの構造状態を考察できると考えられ、今後、この観点から更に調査を進めていくことにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
金属ガラスのナノスケール不均質性について、動的緩和モード、フラギリティーの関連、および、アルゴン凍結分布(空孔分布)から、明瞭な相関関係を得ることができている。
|
Strategy for Future Research Activity |
合金間の差異、熱処理に伴う変化、動的熱処理に伴うアルゴン凍結分布の変化を更に系統的に調査することによって、Fragileな金属ガラスやStrongな金属ガラスのナノスケール不均質性の特徴をより正確に把握できると考えている。合金組成、構造緩和度、および、動的熱処理などに伴うナノスケールの変化を、動的結晶化の組織から判断することが当初のアプローチであったが、Ar凍結分布を解析することによって、強結合領域と弱結合領域(slow-b緩和域)を視覚的に見出すことができたため、この解析アプローチに変更することとした。
|
Research Products
(12 results)