Research Abstract |
水相が共存する二酸化炭素加圧下の膨張有機液相の反応場としての特徴を明らかにするために,本年度はニトロベンゼンの選択的水素化を取り上げた。これまでの研究によれば,反応系を二酸化炭素で加圧すると総括の反応速度が増加し,目的生成物であるアニリンが転化率によらずほぼ100%の選択率で得られる。加圧効果が極大となる圧力は,10MPa程度であった。水添加によって二酸化炭素加圧発現の圧力,生成物分布がどのように変化するかに注目した。 ニトロベンゼンを反応基質,アルミナ担持ニッケルを触媒として,50℃で反応実験を行った。その結果,水が共存すると二酸化炭素の加圧効果は1MPa程度の低圧で水不在時の極大値にほぼ匹敵する転化率が得られた。圧力を更に高くすると転化率は,緩やかではあるが更に増加することが分った。水が共存してもアニリンが唯一の生成物で100%選択率は同じであり,ニトロベンゼン水素化によるアニリン合成に対して,水-有機膨張液相の有用性が認められた。 上記の多相系反応場によるニトロベンゼン水素化反応の特徴を調べるために,反応中間体のニトロソベンゼン,フェニルヒドロキシルアミンを出発反応物とする水素化実験も行った。水と加圧二酸化炭素が存在する場合,ニトロベンゼンはニトロソベンゼンを経由せずに直接フェニルヒドロキシルアミンに変化し,この過程が律則段階であると推測された。高圧その場赤外分光法によりニトロ其の反応性は二酸化炭素分子との相互作用により低下ことが原因と考えられる。更に,常温常圧下での赤外分光法による予備的な検討によれば,フェニルヒドロキシルアミンのN-O基と水の間に相互作用が存在し,そのアニリンへの変化を促進させる可能性が示唆された。 上記以外にニトロスチレン水素化についても同様な検討を行って,二酸化炭素加圧と水添加の影響を検討した。
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