2011 Fiscal Year Annual Research Report
重粒子線治療の二次被ばく線量評価に向けた中性子・ガンマ線断面積の研究
Project/Area Number |
22360406
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
魚住 裕介 九州大学, 大学院・工学研究院, 准教授 (00232801)
|
Keywords | 核データ / 粒子線ガン治療 / 二重微分断面積 / シンチレータ / 中性子 / ガンマ線 / nγ弁別 |
Research Abstract |
重粒子線ガン治療では、中性子による二次被ばく線量の予測が喫緊の課題であり、シミュレーションコードの開発が必要となっている。しかし、計算に必要な生体構成元素に対する中性子およびγ線の生成断面積データはほとんど無い。本研究では広いダイナミックレンジを有する低温動作型中性子検出器とデジタル波形解析システムを開発し、生物学的効果が大きな1MeV領域を含む0.1MeV~500MeV程度までの二重微分断面積を決定する。中性子とγ線データとを同時に決定して、医療用核データとして整備すると共に、核反応理論計算を改良してその予測精度を向上させることを目的としている。平成23年度は、放射線医学総合研究所HIMACにおいて前年度までに測定したデータの解析を進めると同時に、低温動作型検出器の改良、デジタル波形処理システムの開発、新しい測定の実施を目標として研究を行った。中性子エネルギー0.1MeVまでのnγ弁別を可能とするため、低温動作型シンチレータの検出システムについてテストを行い、nγ弁別FOMが30%程度向上することを確認できた。しかし、実際のデータ解析では実用的でなく、効果は小さかった。こめため、従来の光検出器を高感度のものに換えるため、光センサモジュールを用いて更なるnγ弁別FOMの向上が可能となった。また、平成23年度は開発したデジタル波形処理システムを使用して放射線医学総合研究所HIMACにおいて新しい断面積データの測定を実施した。波形解析アルゴリズムとしては、最も高いFOM値をテスト実験で得たダブルゲート法を用いた。実験では、ビームとして290MeV/u炭素イオンを使用し、ターゲットとして窒素と窒化アルミ、生体ファントムとしての水を使用して中性子とγ線の二重微分断面積を測定した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
測定における中性子検出下限0.5MeVの達成が重要なポイントであったが、1年目でこれを達成して2年目はその改良を行いつつ、断面積データの取得を行う事が出来た。
|
Strategy for Future Research Activity |
ビームエネルギー290MeV/uでの測定を様々なターゲットについて行い、このエネルギーでの測定はほぼ完了したと考えられ、その結果核反応理論モデルの問題点等が明らかになってきた。今後はビームエネルギーを下げて100MeV/uで測定を行い、モデルの改良を行う予定である。
|