2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22370010
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
吉村 仁 静岡大学, 創造科学技術大学院, 教授 (10291957)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
粕谷 英一 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00161050)
長谷川 英祐 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (40301874)
松浦 健二 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (40379821)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | シロアリ / 働かないアリ / 持続可能性 / 性比 / 環境変動 / コロニー存続 / シミュレーション / 血縁選択 |
Research Abstract |
環境変動に対応した適応戦略について幾つかの成果を出した。まず、変動環境における個体群の持続可能性、つまり絶滅回避の観点から性比の最適性を解析して、若年死亡率が高い性に出生性比が偏ることを見出した。この理論は、世界ではじめての人間の性比が男性よりになることを説明する理論である(Evolutonary Ecology Researchに発表)。また、変動環境における採餌行動の一般理論を構築した。この理論から、一般に世代を超える変動環境の影響は、リスク回避がより強く選択されるが、まれな場合には、リスク選好もあり得ることを見出した(J. Ethology発表)。さらに、人間や動物の生涯の行動のように、個体のダイナミックな行動(時系列の行動連鎖)の最適性を、確率過程を仮定した解析から理論化した。これは動的意思決定理論と呼ぶ内容である。従来、動的計画(Dyanmic Programming)や確率的最適制御のように、数値解析かそれに順ずる解析しかできない現状であった。つまり、世界ではじめて、ダイナミックな行動連鎖の最適性を解析する方法を提供している。この成果の第1の応用・展開は、経済学で50年以上も問題となっているアレイのパラドックス(Allais Paradox)の唯一の論理的な回答である。この成果は、J. Ethologyに2通の招待論文として掲載された。 このほか、周期ゼミの分子系統から13年と17年の周期が、独立に3つのグループから進化したといえる(PNASに掲載:新聞報道、Science誌に紹介記事)。また、藻類の異形配偶子の適応理論から、精子のサイズ多様性が進化することを見出した(PNAS誌)。その他、アリの労働時間と社会の持続性、シロアリのフェロモン、など様々な観点から存続問題を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究の展開は申し分なく、変動環境に関する研究を展開、代表者の吉村仁だけで9通もの英語原著論文を発表、その内2通はPNASに発表という成果をあげた。 研究内容では、持続可能性の視点から様々な研究を展開、絶滅確率からみた人間の性比の最適化の研究、人間を含む動物行動の動的最適化の理論を発表、メタ個体群の存続可能性の理論など、多数の論文を掲載または掲載予定となった。さらに、絶滅回避の進化理論に関する一般啓蒙書(ちくまプリマー新書で4月出版)を発表した。 このほか、長谷川英祐は、働かないアリなどの実証研究を遂行して、とくにNature Communicationsに発表など様々な成果をあげた。また、粕谷英一は、捕食リスクに対する適応の論文など幾つかの成果のほかに、教科書として「一般化線形モデル」(共立出版)を出版した。さらに、松浦健二は、シロアリの女王フェロモンの機能など様々な成果をあげて、多数の論文を発表した。 以上のように、存続可能性を指標にした研究を多数展開して、多くの原著論文を発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も昨年度のように、多方面へ研究の展開を進める予定であり、まったく計画には問題がない。200-300%以上の発展をしており、研究上の問題点や変更はいまのところない。 今後は、さらに、これらの成果を1つの大きな学問分野として体系化していくつもりである。これにより、人間社会を含む、生物社会の存続可能性を追求して、生物の適応進化のメカニズムを解明していく。さらに、その応用として、人間社会の持続可能性または、絶滅回避の問題を考察する。とくに、近年の国際経済の不安定化や多数の破綻(ブラックマンデーやリーマンショックなど)や、温暖化など様々な環境問題など人間社会が引き起こしている地球環境問題などの原因究明やメカニズムから見た解法を検討したい。上述のように、生物としての人間を、生物社会の存続可能性から見直すことをしていく予定である。
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Research Products
(26 results)