2011 Fiscal Year Annual Research Report
プラナリアの有性化を誘導するD体トリプトファンの作用機構の解明
Project/Area Number |
22370026
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
小林 一也 慶應義塾大学, 医学部, 特任講師 (50360110)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 緑 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (00211574)
田中 裕之 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (10293820)
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Keywords | D体アミノ酸 / トリプトファン / 配偶子形成 / 生殖様式 / プラナリア |
Research Abstract |
本研究の目的は、プラナリア有性化を誘導するD-トリプトファン(Trp)の作用機構の解明である。具体的には、(1)D-Trpの局在を制御する分解酵素の解析、(2)D-Trp受容体の同定、(3)D-Trp以外の有性化因子の単離・同定を行なっている。 プラナリアのD-Trp受容体を単離・同定するため、哺乳類で報告されているD-Trpの受容体GPR109bのプラナリアホモログ遺伝子に注目し、ホモロジーの高いプラナリアGPRの上位4遺伝子(Dr-506,Dr-5HTR,Dr-227,Dr-206)の部分配列を決定した。Dr-5HTR-iとDr-206はセロトニン受容体候補遺伝子であった。ホールマウントIn situハイブリダイゼーション法により、Dr-5HTRのみが卵巣付近の神経組織で強く発現していることがわかった。RNAi法によるDr-5HTRのノックダウン個体ではD-Trpによる卵巣形成を阻害することがわかった。このことはDr-5HTRがD-Trpの受容体候補遺伝子であることを示唆する。 プラナリアにおけるD-Trpの局在はすなわち、その作用器官・組織を理解することになる。D-アミノ酸の局在はD-アミノ酸酸化分解酵素(DAO)の局在とはモザイクになるという間接的な証明方法をとることができる。これまで、プラナリアDAO、Dr-DAOを単離・同定して、RNAi法による機能解析を行なったところ、Dr-DAOのノックダウン個体では、D-Trpの卵巣誘導活性を促進するだけでなく、D-Trpの投与なしに卵巣誘導が起こった。この結果はD-Trpも含めてDr-DAOの基質となり、かつ卵巣誘導に関与する物質が存在することを示唆していた。今回、我々は、有性個体の80%aq.EtOH抽出物を、各種溶媒で分配した有性化活性画分に融合タンパクDr-DAO処理することで有性化活性が低下することを明らかにし、この有性化活性画分には少なくともD-Trpは含まれていることを確かめた。また、我々は、D-Trpの他にD-アルギニン、D-フェニルアラニン、D-ロイシン、D-アスパラギンがプラナリアに卵巣を誘導することを明らかにした。これらのD-アミノ酸が活性画分中に含まれる可能性が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究項目(1):プラナリアDAO、Dr-DAOに関して遺伝子、タンパクレベルでの機能解析をほぼ完了した。研究項目(2):D-Trpの受容体候補遺伝子としてセロトニン受容体ホモログDr-5HTRを得ることができた。研究項目(3):完全有性化は引き起こせないものの、卵巣誘導因子としてD-Trp以外に4つのD-アミノ酸を決定することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究項目(2):D-Trpの受容体候補遺伝子Dr-5HTRを培養細胞、あるいはアフリカツメガエル卵母細胞に発現させ、生理学的手法により、D-Trpの受容体として機能しているかを検証する。研究項目(3):引き続き、D-Trp以外の有性化因子の単離を、有性個体を材料にしてHPLC(ODSやコレステリルカラム)や薄層クロマトグラフィーを用いて行なう。活性物質が単一になった時点で、NMRや質量分析計を用いて構造決定を行なう。
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Research Products
(13 results)