2011 Fiscal Year Annual Research Report
1分子計測法によるチャネルタンパクのゲーティングダイナミクスの研究
Project/Area Number |
22370059
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Research Institution | The Graduate School for the Creation of New Photonics Industries |
Principal Investigator |
井出 徹 光産業創成大学院大学, 光産業創成研究科, 教授 (60231148)
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Keywords | イオンチャネル / 1分子計測 / 単一チャネル電流 / 人工膜 / 蛍光 |
Research Abstract |
イオンチャネルタンパクの活性発現に伴う構造変化を解明するために、これまでに開発した単一チャネルの電気・光学的同時計測システムを用いて、リガンドのタンパクへの結合解離、構造変化と機能変化を電気的・光学的に同時計測することを目指している。 本年度は、特にカリウムチャネルの一つであるKcsAチャネルの開閉機構を明らかにすることを目的とした。KcsAのpHセンサー部位を特定するために、細胞内領域の酸性アミノ酸を中性に替える変異を行った。その結果、特定の酸性アミノ酸がpHセンシングに大きくかかわっていることが明らかとなった。これは我々の主張するモデル-細胞内領域の変形が、チャネル活性発現の引き金となっている-を裏付けるものと考えられる。 また、KcsAを微細なSi針表面に固定し、これを人工脂質二重層膜に組み込む技術を開発した。これを用いて、単一チャネル電流を計測しながらチャネルに力を加え、機能を制御することに成功した。KcsAの細胞内領域部分に膜と垂直方向に力を加えることによって、チャネル電流をコントロールできた。この結果も上記モデルを支持している。さらに、上記技術を応用して、構造変化と機能変化を1分子レベルで同時に捉える装置(光学的・電気的同時計測装置)の改良を行った。直径100nm以下に尖らせたガラス棒の先にHisタグを介してKcsAチャネルを固定し、チャネルを直接脂質二重層膜に組み込むことに成功した。この方法では、ほぼ100%の確率でチャネルを膜に再構成することができる上、ガラス棒を膜に接触させて数分以内でチャネル電流を測定することができた。この方法を従来の同時計測装置に組み込み、全反射顕微鏡で蛍光1分子が観察できるエバネッセント場の範囲でイオンチャネルを脂質二重層膜に再構成し、電流を測定することができた。この改良した装置を使えば、チャネルの電流計測と光学的計測を同時に効率よく測定できるものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね計画通り進行している。KcsA以外のチャネル(MthK,KvAP)については研究が遅れているが、装置開発が進めば、これらに適用することは比較的容易と考えられる。計画の推進に伴い副次的な成果(申請書に明記していない力計測やCFTRチャネルへの応用など)も得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
概ね申請書通りの計画を推進する。本年度開発した1分子操作法と1分子イメージング技術を組み合わせて、単一チャネルの電気・光学同時計測を行う。まず、KcsAチャネルを中心に解析を進める。
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