2012 Fiscal Year Annual Research Report
1分子計測法によるチャネルタンパクのゲーティングダイナミクスの研究
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22370059
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Research Institution | The Graduate School for the Creation of New Photonics Industries |
Principal Investigator |
井出 徹 光産業創成大学院大学, その他の研究科, 教授 (60231148)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 1分子計測 / 単一チャネル電流 / イオンチャネル |
Research Abstract |
イオンチャネルタンパクの活性発現に伴う構造変化を解明するために、これまでに開発した単一チャネルの電気・光学的同時計測システムを用いて、リガンドのタンパクへの結合解離、構造変化と機能変化を電気的・光学的に同時計測することを目指している。 本年度は、前年度に引き続き、カリウムチャネルの一つであるKcsAチャネルの開閉機構を明らかにすることを目的とした。前年度までに、遺伝子工学的手法を用いてKcsAの細胞内部分の数個の酸性アミノ酸がpHセンシングに大きくかかわっていることを明らかにした。今年度は、この部位の構造変化がタンパクの機能に及ぼす影響を1分子計測によって明らかにすることを試みた。 (1)イオンチャネルタンパクの1分子レベルでの構造変化の可視化 上記の方法は、多分子系でKcsAチャネルの開閉を疎水度によって蛍光強度が変化する蛍光色素(テトラメチルローダミン、TMR)を用いて捉える方法であるが、この方法を1分子イメージングに応用した。その結果、固体支持膜に再構成したTMR標識KcsAの開閉を蛍光のオン・オフとして明確に捉えることができた。KcsAチャネルが活性化される低pHでは輝点が持続して観測され、不活性化状態の高pHでは明滅を繰り返す様子が観測された。これらのことにより、KcsAは、活性化条件下では安定した構造状態をとっている一方、不活性化条件下では頻繁に構造状態が変化していることが示唆された。 (2)同時計測系の開発・改良 ガラス針の先端にHisタグを介して固定したカリウムチャネルを直接人工膜に再構成する方法を開発し、同時計測装置に組み込んだ。その結果、ガラス針を膜に押し付けて数秒から数分以内にチャネル電流が見られた。この方法により、チャネルの膜への組み込み効率が上がり、異分子同時計測の障害となっていたチャネルの拡散の問題が解消された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
装置の開発・改良は概ね予定通り、或いは予定していた以上に進展している。但し、多くのチャネルタンパクに適用可能である、汎用性の高い1分子計測装置の開発を目指して研究を開始したが、現状では、装置を適用できたのはKcsAチャネルタンパク1種類のみであり、やや当初の計画より遅れている。これは、最近、研究代表および共同研究者が異動し、研究環境を整備するのに時間を要したことが主な原因であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、ガラス針に固定したチャネルを直接人工膜に組み込む方法を開発・改良した。この再構成法を先鋭化した光ファイバーに適用し、ファイバーを通して照明すれば、チャネルタンパク近傍のみを照明することが可能となり、より容易に同時計測を実現できる。同時計測への組み込みを行うと共に、単一チャネル電流計測とAFMカンチレバーを用いた単一チャネルの操作を組み合わせた装置の開発も行う。これらの方法により、イオンチャネル1分子と阻害剤(あるいは賦活剤)1分子との相互作用、タンパク内構造変化を電気・光学的に1分子同時計測する。 具体的な研究計画は以下の通りである。 1.光ファイバーの微細加工:次項の再構成を効率よく行うため、ファイバーの形状、表面状態などを検討する。 2.再構成法の改良:光ファイバーに固定した可溶化チャネルタンパクを人工膜に再構成する方法の効率化。再構成の高効率化を図るために固定法、計測条件等を検討する。 2.蛍光標識したKcsAを人工膜に組み込み、1分子チャネルの電気・光学同時計測を行う。チャネル阻害剤AgTxを蛍光標識し、AgTxとチャネルの相互作用を1分子同時計測する。さらに、蛍光共鳴移動法等によりタンパク自身の構造変化も1分子計測する。
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[Journal Article] Lab on a Chip2012
Author(s)
Y. Oyama
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Journal Title
A glass fiber sheet-based electroosmotic lateral flow immunoassay for point of care testing.
Volume: 12
Pages: 5155-5159
DOI
Peer Reviewed
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