2010 Fiscal Year Annual Research Report
最終氷期以降の分布拡大に伴う森林樹木の遺伝的適応に関する集団遺伝学的研究
Project/Area Number |
22370083
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
舘田 英典 九州大学, 大学院・理学研究院, 教授 (70216985)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
陶山 佳久 東北大学, 農学研究科, 准教授 (60282315)
|
Keywords | 集団遺伝学 / 適応進化 / 最終氷期 / 照葉樹林 / 集団構造 / 中立遺伝子 / 適応淘汰遺伝子 |
Research Abstract |
本研究では最終氷期最盛期以降の温暖化に伴って起こったと考えられる樹木の適応進化を,照葉樹林を代表する3樹種イスノキ、サカキ、カラスザンショウと、北米のヌマスギを材料とし、遺伝子のレベルで明らかにすることを目的とする。このために「中立遺伝子」で予測される遺伝変異パターンからずれた変異パターンを持つ「適応淘汰遺伝子」を探索する。これにより照葉樹林やヌマスギの最近2万年間の分布域拡大の様相と、それによって起こった適応進化を明らかにする。本年度はイスノキ、サカキおよびヌマスギのEST配列の決定を行い、それぞれの種で約7000種類の遺伝子配列を得ることが出来た。その情報に基づきサカキで100程度の遺伝子を増幅できるプライマーを設計した。またイスノキとサカキでサンプルを収集し、イスノキについては10遺伝子座で塩基配列多型を調査した。カラスザンショウについては31核遺伝子座で鹿児島及び伊豆集団の塩基配列多型を調査し、過去の集団構造の推定を行った。その結果、現在の日本のカラスザンショウ集団の遺伝的変異は南九州のレフユージア集団の最終氷河期以降の拡張により説明できるが、現在の南九州集団の方がレフユージア集団よりサイズが小さく推定される等、過去に複雑な集団構造の変化があったことが明らかになった。一方ヌマスギについては10遺伝子座で塩基多型を調査し、予備的な解析を行った。その結果ヌマスギでは過去に集団の増大が起こっており、日本の近縁種であるスギ集団とは対照的な歴史を経ている事が明らかになった。また適応候補遺伝子の一つである植物耐病性遺伝子R-geneが共通に持つLRRと呼ばれる繰り返し配列を5種の植物種ゲノムデータを使って解析し、その繰り返し数の変化率が種によって大きく異なる事を明らかにした。
|