2011 Fiscal Year Annual Research Report
最終氷期以降の分布拡大に伴う森林樹木の遺伝的適応に関する集団遺伝学的研究
Project/Area Number |
22370083
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
舘田 英典 九州大学, 大学院・理学研究院, 教授 (70216985)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
陶山 佳久 東北大学, 農学研究科, 准教授 (60282315)
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Keywords | 集団遺伝学 / 適応進化 / 最終氷期 / 照葉樹林 / 集団構造 / 中立遺伝子 / 中立遺伝子 / 適応淘汰遺伝子 |
Research Abstract |
本研究では最終氷期最盛期以降の温暖化に伴って起こったと考えられる樹木の適応進化を,照葉樹林を代表する3樹種イスノキ、サカキ、カラスザンショウと、北米のヌマスギを材料とし、遺伝子のレベルで明らかにすることを目的とする。このために「中立遺伝子」で予測される遺伝変異パターンからずれた変異パターンを持つ「適応淘汰遺伝子」を探索する。これにより照葉樹林やヌマスギの最近2万年間の分布域拡大の様相と、それによって起こった適応進化を明らかにする。本年度より塩基配列決定を効率的に行うために、核遺伝子を次世代シークエンサーにより解析することにした。まず昨年度設計したサカキの96遺伝子座のプライマーを使って、鹿児島、宮崎、四国、対馬の4集団から各12個体、合計48個体のDNAでPCRを行い、各個体・遺伝子座で産物DNAをほぼ同濃度に調整した後、次世代シークエンサーを使って塩基配列を決定した。現在得られた配列を解析中である。イスノキについても約100遺伝子座のプライマーを設計し鹿児島・宮崎集団より得たDNAを使ってPCR産物の調整中である。ヌマスギではマイクロサテライトマーカーによる研究からフロリダの二亜種とテキサス集団を含めたより広範囲の解析が必要であることがわかったので、テキサス集団の採集を行うともに、これらを含む8集団で5核遺伝子の解析を行ったところ、他の遺伝子座では殆ど見られないが、AMT遺伝子座で二亜種間にかなり強い遺伝的分化が見られることがわかった。二亜種は川沿いと池のように水の溜まるところにそれぞれ分布しており、AMT遺伝子はこのような環境への適応に関与している可能性がある。テキサス、ミシシッピー、フロリダの二亜種の集団で次年度次世代シークエンサーを使って多数の遺伝子座を解析し、このような候補遺伝子を探索する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次世代シークエンサーを使った解析では濃度調整やデータ解析に試行錯誤が有ったが1種については予備的結果を得ることが出来た。手順が効率化されてきているので3樹種について計画終了までに解析を終えることができると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画時には第一世代シークエンサーのみにより塩基配列決定を行う予定であったが、テクノロジーの進展を考慮しより多数の個体で解析を進めるために、次世代シークエンサーを併用して解析することにした。必要なサンプルは揃っているので、DNAの濃度調整やデータの解析の更なる効率化を図りながら、多遺伝子座の集団解析を進める。
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