2010 Fiscal Year Annual Research Report
発達期低アミノ酸栄養による統合失調症関連機能異常リスクのモデルマウスによる解析
Project/Area Number |
22380078
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
古屋 茂樹 九州大学, 大学院・農学研究院, 教授 (00222274)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
友永 省三 九州大学, 大学院・農学研究院, 助教 (00552324)
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Keywords | アミノ酸 / セリン / 発達期 / 低栄養 / 精神疾患 / 統合失調症 |
Research Abstract |
本研究は、発達期におけるアミノ酸栄養欠乏による統合失調症関連神経機能障害のリスクを、動物モデルを用いて実験的に検証することを目指している。発達期の「低栄養ストレス」による後成的変化は精神疾患領域において近年着目されつつある。統合失調症は精神疾患としては発症リスクが高く、複数の疾患脆弱性遺伝子に加え、環境要因との桐互作用も推定される完治の困難な精神疾患である。環境要因としては疫学的研究から、発達期の低栄養により、発症率が約2倍高まることが報告されている、しかし、発症リスクに関連する栄養素の実体と機序については、十分に理解されていない。そこで本研究はアミノ酸/タンパク質栄養欠乏に着目し、神経伝達物質ネットワーク、NMDA受容体機能、および統合失調症関連感覚情報処理機構への影響を実験動物において統合的に評価し、その分子的背景の解析を行うものである。遺伝子組換マウスと栄養介入モデルマウスの分子レベルの解析と行動解析を組み合わせることにより、従来必ずしも明解でなかった発達期のアミノ酸栄養と統合失調症に関連する行動異常リスクとの関連を、包括的に理解することを目指している。解析に用いる実験動物としては遺伝性セリン合成不金モデル(脳特異的Phgdh KOマウス)と野生型マウスへの栄養介入によるアミノ酸全般制限モデル等を鰐いる計画である。本年度は既に作製済みである遺伝性セリン合成不金モデルについて、生後発達期2週齢での神経伝達物質の代謝ネットワークとNMDA型グルタミン酸受容体にリンクした細胞内情報伝達系の変化を中心に解析を竹ない以下の結果を得た。 1.脳内L,D-セリン含量が顕著に低下していたグリシンも有意に減少していた。 2遺伝性セリン合成不金モデル海馬では、NMDA受容体の下流で転写が正に調節されるArc遺伝子の発現量が有意に減少していた。しかしNMDA受容体サブユニットmRNAレベルに低下は認められなかった。 3.生後2週齢においても成獣セリン合成不全モデル海馬で観察される遺伝子発現変化が起こっていた。 4.予備的な行動解析ではセリン合成不全モデルの自発運動が亢進していた。
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