Research Abstract |
平成23年度の灌漑期に,愛媛県0地区の圃場整備済み水田(1,250m^2)に対して,実際の集落排水処理水を無希釈で連続送水(約6,000mm)して水稲栽培を実施した.その結果,水田では,処理水に含まれる解熱消炎鎮痛剤(Ketoprofen, Indometacin, Diclofenac Sodium, Propyphenazone),鎮痒剤(Crotamiton, Lidocaine),抗潰瘍剤(Sulpiride),紫外線吸収剤(Benzophenone),防虫剤(N,N,Diethyl-m-tolumide),抗菌剤(Levofloxacin),高脂血症用剤(Bezafibrate),抗生物質(Clarithromycin)といった広範な医薬品に対して,灌漑期全体で高い除去率(40%以上)が認められた.除去率が特に高かったのは,KetoprofenとSulpirideであり,除去率は約90%以上であった.以上のように,水田はPPCPsの浄化機能を有することが明確となり,再生水の水田への無希釈利用は,水環境へのPPCPs流出:負荷削減の有効手段となる可能性が示された.一方,解熱消炎鎮痛剤3種類(Ketoprofen,Indometacin,DiclofenacSodium)については,水田土壌と水稲の含有量分析も行った.その結果,土壌中含有量は,灌漑期前に比べて灌漑期後で減少した.また,医薬品は水稲の茎・葉で検出され,籾からは検出されなかった.以上より,水田の医薬品除去機能には土壌での分解作用と水稲吸収が重要であることが明らかとなった.カラム試験については,水稲が存在しない条件下での実験を実施し,シミュレーションモデルの基礎データを得た.また,数値モデル構築では,Hydrus-1Dに組み込むための,湛水条件下での光分解モデル部分を作成した.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り,水田では平成23年度の現場実験を継続し,平成23年度に得られた結果の再現性等を明らかにする.「集落排氷施設での医薬品除去状況の実態と対策」については,昨年度までの調査で不十分であった「1日24時間の変動状況調査」を実施する.カラム試験では「水稲の存在による水田での医薬品除去への影響」と「水稲への医薬品吸収」に及ぼす影響因子を主に検討する,数値モデル構築については,カラム試験で得られた結果を再現できるモデルを確立する.すなわち,Hydrus-1Dに,適切な光分解モデルと水稲の医薬品吸収モデルを組み入れる.また,平成24年度は研究最終年度であるため,研究代表者治多が,研究成果を総括する.
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