2011 Fiscal Year Annual Research Report
ネコレトロウイルスの変異と進化:新たなウイルス出現と病原性発現機構の解析
Project/Area Number |
22380168
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
西垣 一男 山口大学, 農学部, 准教授 (20401333)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻本 元 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (60163804)
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Keywords | 遺伝的多様性 / 進化 / レトロウイルス / 病原性 |
Research Abstract |
猫のレトロウイルスである猫白血病ウイルス(FeLV)について、env遺伝子による遺伝的多様性の検討を行った。日本全国から集めたFeLV陽性を示す血液からDNAを抽出し、Env遺伝子の全長をクローニングし塩基配列を決定後、分子系統樹解析を行った。これらの結果、envは3つのGenotypeに分類できることが明らかとなった。さらに、Genotype1では1-7のCladeに分類することが可能であった。FeLVのenvのGenotype/Clade分類と、ウイルスの受容体干渉による分類とはまったく相関することはなかった。日本で蔓延しているFeLVはGenotype1に分類されるウイルスがほとんどであり、日本にFeLVが上陸した後に、各地域に広がり、特徴的なenvをもつFeLV Cladeがその地域で固定されているようであった。FeLVのgag遺伝子についても遺伝的多様性を調べた結果、envによるGenotype/Clade分類とよく一致していた。FeLVの遺伝的多様性について、明らかにしたが、遺伝子の欠損、挿入および組換えといった現象が多々見られた。FeLV env遺伝子の多様性は、遺伝子の点変異だけでなく、遺伝子の挿入、欠損および組換えといったことにより生じていることが明らかとなった。さらに、猫のゲノム中に存在するガンマレトロウイルス(endogenous retrovirus in domestic cat; ERV-DC)とFeLVの組換え体を発見した。このウイルスをFeLV-Dと命名した。FeLV-DはERV-DCのenv遺伝子のFeLVによるtransductionによって生じた組換え体であった。FeLV-Dプロウイルスの全長のクローニングとウイルス分離に成功した。FeLV-Dは既知のFeLVとの干渉実験において、まったく干渉されなかった。FeLV-Dの検出系の樹立を行い、FeLV陽性ネコの血液サンプルをスクリーニングした結果、4例のFeLV-Dの感染を検出した。以上のことより、FeLV-Dという新しいウイルスの出現を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の実験計画および予想外の研究結果も得ることができ、現在はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の実験計画通りに研究を進める。また、これまで得られた結果や知見を学会において発表し、論文として出版していく予定である。
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Research Products
(3 results)