2011 Fiscal Year Annual Research Report
ピロリ菌病原因子OipAのサイトカイン産生機構の解明
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22390085
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
山岡 吉生 大分大学, 医学部, 教授 (00544248)
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Keywords | ヘリコバクター・ピロリ / 菌体病原因子 / 炎症性サイトカイン / 遺伝子変異 |
Research Abstract |
2000年、私は、炎症性サイトカインを胃粘膜上皮より誘導するHelicobacter pylori(ピロリ菌)の新しい病原因子としてOuter inflammatory protein (OipA:外膜炎症タンパク)を発見・命名したが、OipAによる炎症性サイトカイン誘導メカニズムは未だ完全には明らかではない。本事業では、OipAのアミノ酸構造に注目して、OipAが炎症性サイトカイン産生を引き起こすシグナル伝達機構について解明することを目的とする。昨年度から、OipAに存在する190番目および276番目のアミノ酸、さらにはDRY motifに注目し、これらを変異させたoipA相補性変異株を作成することを目標としてきた。 oipA遺伝子相補性変異株は、oipA変異株にoipA遺伝子を再導入した株である。昨年度は、ピロリ菌の遺伝子相補性変異株作成には、chromosome-basedシステムを用いたが、本年度はシャトルベクターを用いる方法にチャレンジし、これらの部位を変異させた遺伝子を組み込んだ、シャトルベクターの作製に成功し、さらにエレクトロぽレーション法で、菌体内にシャトルベクターが組み込まれることも証明することができた。ピロリ菌の相補性変異株を用いた検討をしているグループは国内ではほとんど見られず、新奇性、重要性は高い。ただし、これらの変異では、変異株と野生株を胃上皮細胞と共培養させた場合に、サイトカインの産生に大きな変化はみられなかった。さらに動物モデルとしては、昨年度から、マウスでのピロリ菌感染実験に成功しているため、当初のよていであったスナネズミの系ではなく、マウスの系で研究をすすめることとした。まずは野生株と、OipA以外の病原因子であるcagAの変異株を用いた実験を行なっている。 さらに、OipAやCagA以外の病原因子についても、その疾患誘導機序について、分子疫学研究、動物実験を用いた研究も行なっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
oipA変異株の作製には成功したが、実際にサイトカインの産生をみると、特に期待された変化は認めなかった。そのために、点変異ではなく、Deletion変異を試みる必要があり、その分やや遅れている感があるが、全体としては、ピロリ菌の病原因子全般についての研究がかなり進み、多くの論文も発表できたことから、おおむね順調と自己評価した。oipA変異株に関しては、特定のサイトカインのみに注目しているために、差が出ない可能性もあり、新たにマイクロアレイを計画するなど、今後はペースを上げられる可能性は高い。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように、新たな変異株の作製が必要となったが、その作成を進めていくと同時に、点変異で作製した変異株の性質を検討するため、マイクロアレイを用いた網羅的な解析を行なう。さらに、OipA変異株感染マウスモデルも開始し、In vitro,in vivoの両面からOipAの役割について検討していく。さらに臨床検体を用いて、OipAのヒトにおける役割についても検討をする計画である。
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