2011 Fiscal Year Annual Research Report
肝微小環境において炎症性発がんを制御するantagomirの標的創薬と前臨床試験
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22390149
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
中本 安成 福井大学, 医学部, 教授 (40293352)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山下 太郎 金沢大学, 附属病院, 助教 (90377432)
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Keywords | 癌 / 遺伝子 / 核酸 / 動物 / 内科 |
Research Abstract |
独自に開発した慢性肝炎モデル(Nakamoto et al. : Cancer Res.64 : 3326, 2004)の発がん過程で検出された8個のマイクロRNA分子(miR-21,24,31,101,126,146,148,194)について、がん化の微小環境における役割をin vitro及びin vivoの実験系を組み合わせて機能的に解析した。 (1)ヱイクロRNAの発現解析:Real-time定量的RT-PCR法を用いて、慢性肝炎モデルにおける経時的な発現レベルの変化を定量すると、肝炎発症15ヵ月目から著明な発現の亢進を認めて18ヵ月目に肝がんを発症した。これより、発がん過程においてマイクロRNAの変化ががん化に先導しており、促進的に作用している可能性が示唆された。 (2)形質転換作用の検討:マイクロRNAの機能的解析を行う目的で、培養細胞株(ヒト肝由来;HepG2,TTNT16)のマイクロRNA発現量を検討したところ、肝組織に比較して著明な高発現をみた。これは当初に計画したマイクロRNAの導入法による機能解析が困難であることを示唆した。そこで、インヒビターを用いることによる抑制実験を施行したところ、マイクロRNAの発現は抑制され、コロニー形成能が低下し細胞増殖の抑制効果がみられた。これより、マイクロRNAが機能的に細胞増殖を促進していた可能性が示された。 (3)宿主遺伝子の発現調節作用の検討:(1)(2)で顕著な変動を示した2つのマイクロRNA分子について、インヒビターを用いて培養細胞株での宿主遺伝子の発現レベルを定量した。その結果、2つの宿主遺伝子(GSTA2,APOA4)に対する制御作用が明らかになった。マイクロRNAはこれらの宿主遺伝子の発現レベルを調節することによって、がん化に作用したことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究においては、慢性肝炎モデルの発がん過程で検出されたマイクロRNA分子の役割について、機能的に検討する実験を計画していた。マイクロRNAに関する発現解析、形質転換作用、宿主遺伝子の調節作用について成果が得られており、予定通りの進展と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、今後は肝臓の炎症性発がんの微小環境を念頭において、炎症刺激下におけるマイクロRNAの作用について詳細な機能的解析を進めるとともに、生体内でマイクロRNAに対する抑制作用を発揮する核酸分子(antagomir)の合成を検討する。
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