2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22390190
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
中里 雅光 宮崎大学, 医学部, 教授 (10180267)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 秀樹 宮崎大学, 医学部, 講師 (10305097)
上野 浩晶 宮崎大学, 医学部, 助教 (00381062)
十枝内 厚次 宮崎大学, 医学部, 講師 (80381101)
松尾 崇 宮崎大学, 医学部, 医員 (10404427)
土持 若葉 宮崎大学, 医学部, 医員 (90573303)
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Keywords | 摂食調節 / 視床下部 / ペプチド / 細胞内情報伝達 / エネルギー代謝 |
Research Abstract |
新規生理活性ペプチドNHP (Novel Hypothalamic Peptides)の摂食・エネルギー代謝調節のセンターである脳や下垂体での局在、およびNHP投与後に反応する神経細胞群を検討した。 まず、NHPの視床下部や下垂体での組織内および細胞内局在を検討した。10週齢のWistar系雄ラットをコルヒチン200μg脳室内投与2日後、0.1% glutaraldehydeを含む4% PFAで灌流固定し、免疫染色用に脳を摘出した。免疫染色は、抗NHP抗体(最終希釈濃度5,000倍)を用い、ABC-DAB法で発色した。その結果、摂食・エネルギー代謝調節に重要な室傍核、外側野、弓状核や、水・電解質調節に機能する視索上核にNHP陽性細胞を認めた。α-MSHとの二重染色で、HNPは弓状核においてα-MSHと一部共存することが明らかとなった。下垂体において、NHPはFSH、LHと同一ニューロンに認められた。特にLHとは90%以上と多数認め、ACTH、GHやPRLとは僅かに共存するも、TSHとの共存を認めなかった。 次に、NHP中枢投与後に反応する神経細胞群の同定を検討した。ニューロン活性化の指標であるFos蛋白発現をc-fos-RFPトランスジェニックラットを用いて検証した結果、特定のニューロンの活性化が認められなかったことから、NHPは標的ニューロンの抑制に機能するか、もしくはFos蛋白以外の下流シグナルを介して機能していると推定された。 以上より、われわれが同定したNHPは視床下部の摂食関連神経核に主に局在し、中枢投与にて摂食を抑制する新たな生理活性ペプチドである。下垂体ではNHPが性腺刺激ホルモンであるFSHやLHと共存していることから、生殖機能への関与が示唆された。今後、NHP中枢内投与後の酸素消費量や行動を検討し、摂食・エネルギー代謝や生殖機能におけるNHPの位置づけを明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、in silicoに同定した新規ペプチドが、分子生物学的、行動薬理学的解析により摂食抑制に機能することを明らかにした。こられの実績に加えて、今後の研究をより加速するべく、測定系の改良もしくは、新しい技術の導入を同時におこなった。新規生理活性ペプチドに対する抗体を作製と高感度RIA測定系を確立し、様々な生体ストレスに対するペプチド応答を定量的に測定可能となった。従来、神経活性化の指標であるFos蛋白の発現は、免疫組織学的に判定する方法に依存していた。申請者らは、Fos蛋白プロモーターの下流に赤色蛍光蛋白遺伝子を導入したラットを作出し、神経の活性化を特異的に観察することを可能にした。このことにより新規ペプチドの神経回路上の役割を正確に把握できるようになった。また生細胞内外の電気抵抗変化の変化から、受容体応答が解析可能な新たなシステムを導入し、新規ペプチドの標的蛋白の同定に着手している。標的蛋白の同定およびその分布から、新規ペプチドの生理学的役割を明確化できるようになる。以上のことから当初の計画以上に伸展している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果を基に、以下の4つの研究課題を実施する。1)新規ペプチドの分泌動態と情報伝達機構の解明、2)遺伝子操作マウスの作出とそのマウスを用いた機能解析、3)セクレトスタチンおよび新規ペプチドの臨床的意義に関する研究、4)新規ペプチドの糖代謝・インスリン分泌に及ぼす影響。上記の研究課題を行い、摂食・エネルギー代謝や生殖機能におけるNHPの位置づけを明らかにする。
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