2010 Fiscal Year Annual Research Report
抗リン脂質抗体症候群の発症メカニズムの分子病態論的解析
Project/Area Number |
22390198
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小池 隆夫 北海道大学, 大学院・医学研究科, 教授 (80146795)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渥美 達也 北海道大学, 大学院・医学研究科, 准教授 (20301905)
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Keywords | 自己抗体 / 抗リン脂質抗体 / 抗リン脂質抗体症候群 / 血栓症 / 単球 / 質量分析 / プロテオーム |
Research Abstract |
多くの血栓症患者で血栓傾向の理由は明らかでないが、最近抗リン脂質抗体症候群(APS)とよばれる自己免疫性血栓症が高頻度に存在することがわかってきた。本研究では、APSにみられる自己抗体の主要な対応抗原のひとつであるβ2-グリコプロテインIに注目し、抗リン脂質抗体がどのように血栓傾向と関連するかを検討している。 抗β2-グリコプロテインI抗体は、向血栓細胞である単球や血管内皮細胞に結合してそれらを活性化する。その活性化経路につき、報告者が既に明らかにしたMyD88からp38MAPKリン酸化までの上・下流の経路について、解析を行っている。本年度は、血漿中のβ2-グリコプロテインIと細胞表面レセプターの結合を仲介する分子を同定するために質量分析解析をおこなった。まず、FLAGタグβ2-グリコプロテインI発現ベクターを構築した。上記をHEK293T細胞に発現させ、その後、培養上清中に分泌されるリコンビナントFLAGタグβ2-グリコプロテインIを、正常ヒト血漿と混合した。その混合物を使用し、抗FLAG抗体アフィニティークロマトグラフィーによりFLAGタグβ2-グリコプロテインIと複合体を形成するタンパク質(β2-グリコプロテインI関連プロテオーム)を網羅的に分離した。このサンプルをSDS-PAGEにより分離し一次元電気泳動のバンドとして可視化した。上記にて可視化できたバンドをプロテアーゼによりゲル内消化し、抽出したペプチド混合物を脱塩し、MALDI-TOFを用いて測定し、マスフィンガープリンティング法によりデータベースを検索した。その結果、興味深いことにアポタンパクBを含むリポタンパク分子がβ2-グリコプロテインIと細胞の相互作用を仲介している可能性が示された。来年度以降、それらの分子と自己抗体がどのように血栓傾向をひきおこしているか、メカニズムを詳細に明らかにしていく予定である。
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