2012 Fiscal Year Annual Research Report
網羅的発現解析を基盤にした新規骨・軟部腫瘍バイオマーカーの探索と治療への応用
Project/Area Number |
22390296
|
Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
川井 章 独立行政法人国立がん研究センター, 中央病院, 医長 (90252965)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 格 独立行政法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (30284061)
市川 仁 独立行政法人国立がん研究センター, 研究所, ユニット長 (30201924)
落谷 孝広 独立行政法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (60192530)
細野 亜古 独立行政法人国立がん研究センター, 東病院, 医長 (00602947)
|
Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 悪性骨軟部腫瘍 / バイオマーカー / タンパク質 / microRNA / exome sequencing / 網羅的解析 |
Research Abstract |
本研究は、悪性骨軟部腫瘍における治療成績向上の要である化学療法感受性・抵抗性、浸潤能、遠隔転移能等に関して、これらを規定している遺伝子・タンパク質(群)を網羅的遺伝子・タンパク質発現解析の手法を用いて明らかにすること、さらに、これらをマーカーとした個別化医療、分子標的とした新たな治療法の可能性を探ることを目的とする。 当該年度は、悪性軟部腫瘍の中で最も頻度の高い脂肪肉腫の中から粘液型脂肪肉腫を選択し、網羅的タンパク質発現の手法を用いた解析を開始するとともに、昨年度に引き続いて骨肉腫の治療抵抗性に関するmicroRNAの解析をすすめ、新たに次世代シークエンサーを用いた解析も開始した。 1.粘液型脂肪肉腫の手術検体よりタンパク質を抽出し、蛍光二次元電気泳動法によりタンパク質の発現プロファイルを得た。このプロファイルの中から、粘液型脂肪肉腫の再発・転移に関わると考えられる候補タンパク質を選択した。 2.骨肉腫における治療抵抗性の一因である「がん幹細胞」に相当する細胞集団を同定し、その分画を制御するmicroRNAを網羅的発現解析から特定した。本年度は網羅的解析から特定されたmicroRNA1,10,133aの3種類のmicroRNAから、microRNA133aに注目して研究をすすめた。LNAによるmicroRNA133aの発現抑制が骨肉腫細胞の浸潤能及びin vivo移植モデルでの肺転移を抑制する効果を見出した。 3.次世代シークエンサーを用いて軟部肉腫4例、骨肉腫1例のexome sequencingを行い、これらの腫瘍における新たな遺伝子変異候補を見出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、これまでにGISTの新たな予後因子として我々が見出したフェチンの有用性、信頼性を多施設の臨床検体を用いて検証してきた。一方、種々の悪性骨軟部腫瘍における新たなバイオマーカー、治療標的の探索もこれと並行して行ってきたが、本年度は、粘液型脂肪肉腫、骨肉腫において、各々バイオマーカー候補タンパク質、治療標的候補としてのmicroRNA133aを見出した。これらは、いずれもこれまで報告されていないタンパク質、microRNAであり、これら難治性悪性骨軟部腫瘍の新たなバイオマーカー候補、治療標的候補として極めて有望である。このような未知の分子(標的)を網羅的解析の手法を用いて明らかにしてゆくことは本研究計画の最大の目標の一つであり、研究は順調に進展していると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度新たに見出した、①粘液型脂肪肉腫におけるバイオマーカー候補タンパク質の質量分析による解析をすすめ、対応する遺伝子を同定する。②microRNA133aについて、その作用機序を明らかにするために、microRNA133aによって制御される分子群やパスウェイについて、骨肉腫臨床検体での発現解析を実施する。さらに、次世代シークエンサーを用いたRNA sequencing解析とexome sequencing解析をすすめ、新規融合遺伝子・変異遺伝子の探索を続ける。
|