2012 Fiscal Year Annual Research Report
アクションリサーチによる在宅緩和ケア拠点の形成とその活動評価
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22390449
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
大金 ひろみ 杏林大学, 保健学部, 准教授 (60305696)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 真由子 杏林大学, 保健学部, 助教 (00636558)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 在宅ホスピス / 緩和ケア / アクションリサーチ / 住民参加 / がん / がん患者 / 地域ケア / コミュニティ・ディベロップメント |
Research Abstract |
ソフトシステム方法論をベースにしたアクションリサーチの手法を用いて、「地域でのがん患者のケア」を実現するためのニーズを導き出すことを目的としたワークショップを行った。一連のワークショップのトピックは、「地域で看取り、看取られること」とした。これまでの医療福祉の専門職中心から、1) これらの専門職と本テーマに関心のある素人、2) 専門職と患者・家族・遺族、3) 地域住民(1) 2)の参加者を含む42名)へと対象を広げてディスカッションを重ねていった。ワークショップの前後には、研究メンバーによる振り返りを継続的に行い、以下の3つの気づきと学びが取り出された。 a) 住み慣れた地域で最期を看取ることへの思いは、医療福祉の専門職と専門職以外の人々とで共有できると思われる。また、本人・家族・ケアを提供する専門職が本音を出し合い、大丈夫と思える関わりの中に地域での看取りへの基盤がありそうである。 b) 看取りについて医学と生活の視点から捉え直すことができた。すなわち個の生命活動とその長さ、一人の命から次の人々の命へのつながりという差異が明確になった。生活の視点からの家での看取りは、家族とその地域とが直接的に触れ合う機会となり、家族・近隣住民・専門職という重層的な人のつながりが生み出されていくといえる。 c) 最期について考え、話し合うことがコミュニティづくりにつながる。家での看とりについて素人は専門職に新たな視点を与え、専門職は素人にその役割や意義を伝えられる。また、看取りの機会は少なく、必要になる時期も明確でないことから、個々のニーズの発生前から動き、その「構え」を作る必要がある。これらはその土地に愛着をもった素人が要となって専門職とともに取り組んでいく必要のある活動であり、専門職と地域あるいは素人の生活領域との間の「縁側」をつくっていく活動といえそうである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、在宅緩和ケアの拠点づくりにおいて、医療福祉の専門職以外の素人やその地域の住民の暮らしや最期の迎え方についての思いを組み入れたコミュニティづくりという視点がより重要であるということが明らかになってきた。このことは、医療福祉の専門職がどのように活動するかという点に焦点が当てられていた多くの先行研究や実践報告とは異なる新たな知見であり、このような成果が得られたという点で順調であると考える。 しかし、アクションリサーチという研究の方法論をとっていることから、具体的な活動も必要である。これまでの成果をふまえた実践的な活動を立ち上げ、試みる段階には至っていないこと、研究成果のまとめ・公表に時間を要していることから、当初の計画よりもやや遅れていると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究参加者と連携しつつ、研究メンバーのネットワークを活用して医療福祉以外の専門職へもアプローチすることにより、以下の1)と2)の推進を図る。1) 実践に至っていないアクションプランを実践につなげる。2) 実践に結びついたアクションプランを継続・発展させる。看取りについての生活の視点からの気づきや学びを深めていくために、素人の参加者や多様な専門職の参加者を増やしていく。生活と医学の視点をより発展させた地域での看取りを考えるために医療福祉の専門職によるワークショップや振り返りを継続的に行っていく。 3) これまでの研究活動の成果をまとめ、公表していく。
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